オトルテン山ではなく南側のホラート・シャフイル山に

オトルテン山ではなく南側のホラート・シャフイル山に

そのため、道を西側の方向に逸れてしまい、オトルテン山ではなく、その南側のホラート・シャフイル山に登ってしまったのでした。その後間違いに気づいた一行は、何も遮るもののない傾斜地にテントを張りました。

敢えて難易度の高い斜面にテントを設営

敢えて難易度の高い斜面にテントを設営

1.5キロほどのところにある森林地帯に入ってキャンプを設営する方が容易で安全でしたが、敢えて難しいルートを踏破して斜面での設営をすることで、トレッキング第3級の条件を満たすことを選んだのではないかと推測されています。

唯一の生存者でメンバーのことを熟知しているユーリー・ユーディンは、「リーダーのディアトロフは、既に登った地点から下山することを躊躇したか、この機会に山の斜面でのキャンプ経験を積むことを推し進めたのではないか」と語っていました。

この選択が命を落とすこととなったのかは定かではありませんが、メンバーが生きていた痕跡はこの場所が最後となります。

ディアトロフ事件発生と捜索・被害者発見

一行が登山を終えてヴィジャイに戻ると、リーダーのディアトロフが彼の所属しているスポーツクラブ宛に電報を送ることになっていました。おそらく、1月25日の出発日から3週間後の2月12日までには送られてくるだろうと想定。

しかし、送られてくることはありませんでした。ディアトロフは出発前ユーディンにもう少し遠征が長引くかもしれないと語っていたため、その時はあまり気にすることはなかったということ。こういった登山での計画の遅れはよくあることだったのです。

捜索

捜索は2月20日に始まる

捜索は2月20日に始まる

電報が届く予定の12日から8日後の2月20日になると、さすがに帰りを待っている家族たちが心配し始め、捜索を要請します。

最初に立ち上がったのは、ウラル科学技術学校のボランティアの学生と教師たちから成る捜索隊でした。その後警察や軍が腰を上げ、ヘリコプターや航空機を使っての大規模な捜索となりました。

2月25日ホラート・シャフイル山で激しく損傷したテントを発見

2月25日ホラート・シャフイル山で激しく損傷したテントを発見

2月25日、捜索に加わっていた学生のミハイル・シャラヴィンが、ホラート・シャフイル山で激しく損傷しているテントを発見します。ミハイルの話では「テントは半分に引き裂かれ、雪に覆われていました。中には誰もおらず、荷物はテントに置き去りにされていました」と語っていたそうです。

裸足や靴下の足跡が500メートル続いていた

裸足や靴下の足跡が500メートル続いていた

調べによると、テントは内側から引き裂かれており、靴下を履いた状態の足跡が8~9個、片脚だけ靴を履いた足跡、裸足の足跡がテントから1.5キロ北東にある森に向かって続いていました。しかし、500メートルのところで足跡は雪に埋もれて隠れてしまっていたということでした。

遺体発見

最初にクリヴォニシェンコとニコラエヴィチの遺体を発見

最初にクリヴォニシェンコとニコラエヴィチの遺体を発見

その後、捜索隊はテントから1.5キロ地点の森のはずれのヒマラヤスギの下で、下着姿で靴を履いていないユーリー・クリヴォニシェンコとユーリー・ニコラエヴィチの遺体を発見。

遺体のそばには焚火をした痕跡があり、木の枝が5メートルの高さまで折られていたそうです。この状況から2人のうちの誰かが木に登って何かを探していたのではないかと思われます。

おそらくキャンプの場所を探していたか、仲間を探していたのではないでしょうか。

次にディアトロフ・コルモゴロワ・スロボディンの遺体を発見

次にディアトロフ・コルモゴロワ・スロボディンの遺体を発見

それから暫くして、キャンプ地とヒマラヤスギの間の一直線上に、ディアトロフ、ジナイダ・コルモゴロワ、ルステム・スロボディンの3人の遺体を発見。

3人の遺体はヒマラヤスギからテントに向かってそれぞれ、300メートル、480メートル、630メートル離れた地点で倒れていました。その状況から、テントに戻ろうとしていたと考えられています。

他の4人の遺体は、見つかるまで2か月以上かかっています。見つかったのは5月に入ってからで、ヒマラヤスギの木から約75メートル奥に入った渓谷でした。

5月に残り4人の遺体を発見

5月に残り4人の遺体を発見

4人の遺体は、渓谷の4メートルの深さの雪の下から発見されました。先に発見された5人の遺体と違い、完全な装備をしていたと言います。推測するところでは、先に発見された5人が自分たちの服を譲ったことを示しているとされています。

ゾロタリョフはドゥビニナの人工毛皮のコートと帽子を身に着けており、ドゥビニナの足にはクリヴォニシェンコのウールのズボンの切れ端が巻かれていました。

ディアトロフ事件の捜査

遺体の状況

5月に発見された4人中3人の遺体に致命傷の傷が

5月に発見された4人中3人の遺体に致命傷の傷が

2月に発見された5人の遺体の死因には全て事件性はなく、低体温症によるものでした。5人の中で唯一頭蓋骨に小さな亀裂が認められたスロボディンに関しても、致命傷となるような傷ではなかったとのこと。

しかし、5月に渓谷で発見された4人の遺体の3人に、致命傷と思われる傷があったのです。チボ=ブリニョールの遺体には、頭部に酷い怪我が認められ、ドゥビニナとゾロタリョフには、酷い肋骨の骨折がありました。

ドゥビニナの遺体には舌と眼球がなかった

ドゥビニナの遺体には舌と眼球がなかった

当時の医師は、これほどの怪我には強い力が加えられており、交通事故に匹敵するほどの怪我であるとしていました。

更に、これらの遺体には目立った外傷はなく、外側から非常に強い圧力が加えられたような状態であったことと、ドゥビニナの遺体は舌と眼球を失っていました。

死因の判断

当初の先住民マンシ人殺害説は否定された

当初の先住民マンシ人殺害説は否定された

捜査当初、先住民のマンシ人が自分たちの土地に侵入したメンバーを襲い、殺害したのではないかとの憶測も流れましたが、現場にそれらしき足跡はなく、争った形跡もないことからこの説は打ち消しとなっています。

気温が低いのに薄着で発見

気温が低いのに薄着で発見

当時のウラル山脈は気温がマイナス30度とかなり低く、嵐が吹き荒れていた状況でした。しかし、最初に発見された5人の遺体はかなり薄着で、下着姿の者や靴下だけ、そして裸足になっているなど、現場の状況とはかけ離れた服装をしていました。

また、後に発見された遺体の何人かの足には、先に亡くなったとされるメンバーの衣服を引き裂いてその切れ端を体に巻き付けていたのです。

極寒の気温による失見当識状態の矛盾脱衣で凍死

極寒の気温による失見当識状態の矛盾脱衣で凍死

この状況から推測されることは、マイナス30度という気温から、メンバーは低体温症に陥りました。その症状は、矛盾脱衣と言われる症状で、失見当識状態に陥り、身体の温度が下がると脳が体を温める命令を下し、暑くなるという状態になります。

そのため、衣服を脱いでしまうという行為をしてしまい、体から熱を奪う速度が加速されてしまいます。凍死した人間の20%から50%の遺体が、裸あるいは薄着で発見されるのは、この矛盾脱衣だと言われています。

ディアトロフ事件の原因を検証

メンバー9人中3人の遺体は、頭蓋骨や肋骨の骨折、更には舌と眼球を失った状態で発見され、致命傷と言える傷を負っていました。また、テントを内側から切り裂いている状況や薄着で極寒の外に出てしまっているという状況もありました。更に、遺体の2人の衣服からは高濃度の放射線が検出されています。

そんな謎に満ちた事件の原因となる仮説が、現在までに75もあるというのです。ここでは、旧ソ連政府の報告書による「強風説」を説明していきます。

メンバーは死ぬ6~8時間前に最後の食事を摂っており、2月1日の深夜から2日の明け方までの間に死亡したとみられています。当時の捜査報告書によるディアトロフ事件の原因は、強風によるものと言われていました。

ホラート・シャフイル山は常に強い風が吹いている

ホラート・シャフイル山は常に強い風が吹いている

ある捜索隊の尋問によると、「死因は強風しか考えられない。彼らは強風に飛ばされた」と語っていました。ホラート・シャフイル山は、常に強い風が吹いているということ。

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