タリバンとアルカイダの関係や違いをわかりやすく解説【アフガニスタン】
2021年8月15日、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍が撤退を開始するや、アフガンの反政府勢力・タリバンが一気に攻勢をしかけ、大統領府をアッサリ掌握。これによりアフガン政権は瓦解しました。
この記事では、今さら聞けない「タリバン」と「アルカイダ」の関係や違いについてわかりやすく解説しています。
一方のアルカイダは土着の組織などではなく、イスラム主義を標榜する国際的なネットワークで、様々な国や地域の人々が参加する、国境をまたいだグローバルな過激派組織です。
ちなみに…「アルカイダ」には『基地』という意味があり、自分たちの組織を『ジハード(聖戦)の基地』と捉えているそうです。
しかし、このアルカイダという組織は、2000年代に入り大きく変貌を遂げることになります。
そのキッカケとなったのが、2001年9月11日に、アルカイダが起こした「アメリカ同時多発テロ事件」でした。
アメリカはこの事件以降、世界中のイスラム過激派を壊滅すべく、対テロ戦争に打って出たのですが、その徹底的な攻撃により、アルカイダは壊滅的な打撃を受け、存亡の危機に瀕しました。
その結果、アルカイダは組織が生き延びるために、「組織なき組織」に変わる道を選んだわけです。
これまでのように指揮命令系統を有する組織だと、アメリカにその中枢部分を叩かれればたちまち組織は崩壊してしまいます。ならばそれらをなくしてしまえと、アルカイダは言わば、一種のイデオロギーと化していきました。
その過程では、インターネットが大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。インターネットで繋がっていさえすれば、たとえ組織などなくとも、いつでもアルカイダにアクセスでき、イデオロギーを共有できるからです。
つまり、「アルカイダ」はイスラム原理主義という共通したイデオロギーの下、世界中のイスラム過激派組織がゆるやかに連携する、実組織を持たない国際的なネットワークなのです。
タリバンとアルカイダの関係をわかりやすく解説
タリバンとアルカイダは「バイア」で繋がっている
アルカイダは、1990年代に当時の最高指導者だったオサマ・ビンラディン氏が、タリバンの初代最高指導者オマル師に提示した忠誠の誓い「バイア」によって、タリバンと繋がっています。
ちなみにアラビア後の「バイア」とは、イスラム教徒の指導者に対する忠誠の誓いを意味します。指導者に「バイア」を表明した者は、その相手に服従しなければならず、この誓いを破ることは、イスラム教では何よりの重罪とみなされます。
アルカイダの最高指導者が、タリバンの指導者とその後継者に「バイア」を表明したと言うことは、アルカイダが事実上タリバンに従属していることを意味します。
タリバンは彼らを壊滅へと導いたアルカイダを擁護
と言うことは、アルカイダはアフガニスタンの地から他国を攻撃しないことを、その主人であるタリバンに約束していたはずなのです。
ところが、アルカイダはアフガニスタンでアメリカに対して宣戦布告し、それが2001年9月11日の、アメリカ同時多発テロ事件へと繋がっていくことに…。
言わば、アルカイダはタリバンを裏切る形になったわけですが、それでも9.11後、アメリカがタリバンの最高指導者オマル師にオサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡しを要求した際、オマル師はこれを拒否しています。
タリバンにとってみれば、裏切られてもなお、アルカイダが示した「バイア」を尊重したことに他ならないわけですが、当時のアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは、次のように宣言するんですよね。
「これらの行為をしたテロリストと彼らをかくまう者たちを、われわれは区別しない」
まさに、イスラム諸国が古来より大切にしてきた慣習など知ったことかと、2001年10月、アメリカ主導の連合軍はアフガニスタンへの侵攻を開始し、タリバン政権を崩壊に導いたのです。
アメリカはアフガニスタンを見捨てた?
こうしてアメリカは、旧ソ連軍のアフガン侵攻以来、アフガニスタンを支配してきたタリバンを首都カブールから追い出したのですが、タリバンの残党はしぶとくアフガンの山岳地帯などで抵抗を続けました。
これによりアメリカ軍はこの地に駐留することを余技なくされたわけですが、長期に渡る戦闘により、戦費は膨らみ、多くのアメリカ軍兵士の命が奪われることに…。
アフガン戦争を起こしたジョージ・W・ブッシュに続き、アメリカの大統領に就任したバラク・オバマ元大統領は、アメリカ軍を一部を除いてアフガンから完全撤退させる方針を打ち出すも、なかなか叶いませんでした。
ドナルド・トランプは、そんなオバマ政権のアフガン戦略を徹底批判し、2016年の大統領選挙では「早期撤退」を公約に掲げて勝利。
そして、その公約を果たすべく、タリバンとの間に「和平合意」まで締結するのですが…すったもんだの末に履行されないまま退陣。
そして、そんなトランプ元大統領の後を引き継いだバイデン大統領が、2001年の9.11米同時多発テロから20年の節目を迎えた2021年に、いともあっさりとアメリカ軍の全面撤退に踏み切ったわけです。
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