デーモン・コアとは…

日本に投下する第3の核兵器に使用される予定だったプルトニウムの塊

デーモン・コアは、アメリカの核兵器開発プロジェクト「マンハッタン計画」で、初期の原子爆弾に使用する“核分裂性コア”として製造されたプルトニウム239の塊で、直径 89mm、重さ 6.2kgの球体をしています。

デーモン・コアの画像

デーモン・コアの画像

大きな半球状の物体の中央にある小さな球体の中にデーモン・コアが組み込まれています。

当初「ルーファス」と名付けられたこのコアは、1945年8月19日に日本に投下する第3の核兵器に使用される予定でしたが、日本の降伏によりその必要がなくなったため、実験用に使用されることになりました。

終戦後、ニューメキシコ州のロスアラモスにあった秘密研究所「ロスアラモス研究所」に運ばれた「ルーファス」は、1945年と1946年の2度に渡って臨界事故を起こしました。

この臨界事故による大量の放射線により、それぞれ1名ずつの物理学者の命を奪ったことから、「ルーファス」はいつしか“デーモン・コア(悪魔の核)”と呼ばれるようになりました。

※より厳密には、「ルーファス」が“デーモン・コア”と呼ばれるようになったのは、2度の臨界事故の後なのですが、本記事では以下、“デーモン・コア”という呼称で統一させていただきます。

デーモン・コアの実験で起きた2度の被爆事故の原因は?【画像あり】

秘密研究所「ロスアラモス研究所」で行われた2度の臨界事故につながる実験は、それぞれ反射板により、どれだけ中性子を反射させれば臨界状態に近づくかを確認するためのものでした。

ロスアラモスで起きたデーモン・コアによる最初の臨界事故

1945年8月21日、物理学者のハリー・ダリアンは、後に「デーモン・コア」と呼ばれるプルトニウムの塊の周囲に、中性子反射体である炭化タングステン製のブロックを徐々に近づけて、臨界が起こる条件を確認する実験を行っていました。

ハリー・ダリアンによる最初の臨界事故の再現画像

ハリー・ダリアンによる最初の臨界事故の再現画像

中央の球体がデーモン・コアで、炭化タングステン製のブロックで周囲を一部囲まれています。

反射板となるブロックを「デーモン・コア」に近付け過ぎると、即座に臨界状態に達して核分裂反応が始まり、大量の中性子線が放出されるという、危険極まりない実験だったんですよね。

しかし、ハリー・ダリアンは、あろうことかブロックを誤って「デーモン・コア」の上に落としてしまうという致命的なミスを犯してしまったのです。

すぐにブロックを払い除けたものの、瞬間的に爆発的な核分裂反応を起こし、臨界状態に達した「デーモン・コア」からは、大量の放射線が放出されることに…。

ハリー・ダリアンは推定5.1シーベルトという致死量の放射線に被爆し、実験から25日後に急性放射線障害により死亡しています。

この臨界事故により、デーモン・コア実験の危険性は十分に認識されたはずだったのですが…

ロスアラモスで起きたデーモン・コアによる第二の臨界事故

ハリー・ダリアンによる最初の臨界事故から、たった9ヶ月後の1946年5月21日、カナダ出身の物理学者 ルイス・スローティンらが、ベリリウム製の中性子反射体と「デーモン・コア」を接近させて、臨界状態が発生する距離の測定実験を行っていました。

ルイス・スローティンらが行ったこの実験は、なんと反射体であるベリリウム製の半球の間にデーモン・コアを組み込み、その隙間にマイナスドライバーの先をこじ入れて間隔を微調整しながら放射線量を測定するという危険極まりないものでした。

実験では未臨界の核分裂性物質としてデーモン・コアが使用され、中性子反射体にはベリリウムが使用されました。

球体状にしたベリリウムを半分にカットし、2つの半球状にしたものの中央にデーモン・コアを組み込みます。

このベリリウム半球の上半分と下半分との間にマイナスドライバーを挟み込み、手に持ったドライバーを動かして半球同士を近づけたり離したりすることで、どの程度の距離で臨界状態に達するのかを検出器で測る、という非常に危険な実験を行ってたそうです。

スローティンによる臨界事故の再現画像

スローティンによる臨界事故の再現画像

長いマイナスドライバーを使い、デーモン・コアが組み込まれたベリリウム製の半球どうしの隙間を微調整して、放出される放射線量を測定していました。

もちろん挟み込んだドライバーが何らかの理由で外れて、2つの半球体が完全にくっついてしまえば、デーモン・コアは即座に臨界に達して大量の放射線を放出するという超危険な実験だったんですよね。

ほんの小さなミスも許されない実験であることから、アメリカの物理学者リチャード・ファインマンが「ドラゴンの尻尾をくすぐるようなものだ」と批判し、ほとんどの研究者は実験への参加を拒否したほどでした。

しかし、ルイス・スローティンは、1945年に世界で初めて製造された原子爆弾の組み立てにも参加した物理学者で、言わば「プルトニウムを扱うエキスパート」であり、功名心も強かった彼は先頭に立ってこの実験を実施したのですが…。

世界初の原子爆弾を組み立てるルイス・スローティン(左)

世界初の原子爆弾を組み立てるルイス・スローティン(左)

かくしてスローティンはこの日、何かの拍子に手が滑り、挟み込んだドライバーが外れて2つの半球を完全にくっつけてしまうという致命的なミスを犯してしまうんですよね。

この実験に参加した、スローティンの同僚であるリーマー・シュレーベルは、その瞬間の状況について次のように証言しています。

リーマー・シュレーベル博士は、他の作業に集中するべく実験が行われている場所に背中を向けたそうです。

しかしその瞬間、シュレーベル博士は音を聞きます。その音とは、「スローティン博士が手に持っていたドライバーを滑らせ、ベリリウム半球が完全にくっついてしまった音」だったそうです。

シュレーベル博士は、振り返った瞬間に実験現場から青い閃光が放出されたことを目視し、同時に顔に熱波を感じたと語っています。

関連するキーワード

関連するまとめ

カニバリズムの事件や現在!病気の民族・中国/日本/世界の歴史・有名人や映画など総まと…

カニバリズム(食人)という言葉には嫌悪感を覚えるのではないでしょうか。そんなカニバリズムの世界各国の歴史や有…

Mrsjunko / 493 view

ジョージフロイドは何をした?犯罪歴(薬物/偽札)や死因・警官の逮捕のいきさつを総まと…

警官の行き過ぎた暴力によって死去したジョージフロイドは何をしたのか?今回はジョージフロイドが亡くなった事件に…

aquanaut369 / 206 view

ホアキン・グスマン(麻薬王)の現在!身長と資産・息子や女性関係・映画などの話題まとめ

メキシコの「麻薬王」と言われるホアキン・グスマンさんの生い立ち、身長と資産、女性関係・息子、そして映画・現在…

cyann3 / 1097 view

ディアトロフ峠事件の真相や原因と犯人~被害者の舌が無くなった謎の事象や関連映画まとめ

ディアトロフ峠事件とは、1959年に当時ソ連領のウラル山脈北部で登山をしていた男女9人が、不可解な死を遂げ、…

Mrsjunko / 444 view

タリバンとアルカイダの関係や違いをわかりやすく解説【アフガニスタン】

2021年8月15日、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍が撤退を開始するや、アフガンの反政府勢力・タリバンが…

passpi / 307 view

タイヤネックレスの動画がヤバい!南アフリカと見る方法・漫画イラストと知恵袋・生き残り…

検索してはいけない言葉「タイヤネックレス」について、画像や動画がヤバいとして注目を集めています。また、タイヤ…

cyann3 / 1734 view

ガイルくん死去はなぜ?死因はうつ病?逮捕や行方不明・死の真相まとめ

ゲーム系YoutuberのEtika(エティカ)こと「ガイルくん」の死が注目されており、ガイルくんの逮捕の経…

cyann3 / 550 view

同じカテゴリーの記事

同じカテゴリーだから興味のある記事が見つかる!

ロスチャイルド家の資産!家系図や当主・日本のデヴィ夫人との関係まとめ

ロスチャイルド家について、資産に関する話題が挙がっています。また、ロスチャイルド家の家系図や当主、日本のデヴ…

cyann3 / 644 view

ファイアーボールオハイオ事故の原因と現在!被害者のその後・発生場所も総まとめ

ファイアーボールオハイオ事故とは、2017年7月26日、米中西部オハイオ州コロンバスで移動遊園地のアトラクシ…

Mrsjunko / 521 view

テッド・バンディの生い立ちと娘!事件詳細と実話映画のネタバレまとめ

テッド・バンディとは、1974年から1978年にかけてアメリカの7つの州でおよそ30人の女性を殺害したシリア…

Mrsjunko / 1076 view

アメリカ人の平均身長!男性/女性/子供の年齢別・他との比較もまとめ

アメリカ人について、平均身長が注目を集めています。また、アメリカ人の平均身長を男性・女性などで比較し、子供の…

cyann3 / 1762 view

バリ島爆弾テロ事件の犯人と日本人犠牲者!歴代テロ事件やその後現在まとめ

2002年10月12日に起きたバリ島爆弾テロ事件は、202人の死者を出した衝撃的なテロ事件となりました。その…

Mrsjunko / 434 view

チャールズ・マンソンの死因!身長と生い立ちや家族・事件・晩年や映画化まとめ

「マンソン・ファミリー」と呼ばれるコミューンを率いて連続殺人事件を起こしたチャールズ・マンソン。 今回、チ…

passpi / 751 view

ケネディ大統領暗殺の真相!夫人が脳みそを拾った?犯人も総まとめ

パレード中に暗殺されたことで知られているケネディ大統領。死の真相は未だハッキリしておらず、その真犯人も謎のま…

aquanaut369 / 593 view

アクセスランキング

人気のあるまとめランキング

スポンサードリンク

"); } })(jQuery);