タリバンとイスラム国の最新トピックスから見える両者の微妙な関係

2021年8月26日、イスラム国の支部組織が首都カブール空港で自爆テロ

アフガニスタン駐留米軍の2021年8月末までの撤退期限が目前に迫り、欧米のアフガン脱出作戦が展開されていた8月26日、首都カブールの空港外側で2度にわたる自爆テロが発生しました。

これにより米兵20人を含む160人以上が死傷。同日のうちにイスラム過激派組織「イスラム国」の支部組織が、SNS上で犯行を認める声明を出しています。

2021年10月8日、イスラム国がアフガンのシーア派モスクで自爆テロ

さらに、2021年10月8日、アフガニスタン北部クンドゥズ市のモスクで自爆テロが発生。それによる死者数は少なくとも72人にのぼると報じられ、アフガン駐留米軍の撤収後、最悪のテロ事件となりました。

自爆テロで損害を受けたアフガニスタン北部クンドゥズ市のモスクの惨状

自爆テロで損害を受けたアフガニスタン北部クンドゥズ市のモスクの惨状

このテロ事件でも、イスラム過激派組織「イスラム国」が犯行を認める声明を出しています。

なお、このテロの標的となったのは、イスラム教“スンニ派”であるイスラム国とは対立関係にある“シーア派”のモスクで、爆発当時は約300人が集まっていたそうです。

2件の自爆テロに対する米バイデン大統領とタリバンの対応

まず、2021年8月26日に首都カブール空港で発生した自爆テロに対し、米バイデン大統領は語気を荒げてこう言い切りました。

「私たちは決して許さない。決して忘れない。必ず追い詰め、代償を払わせる」

米バイデン大統領

米バイデン大統領

同時に、「このテロを首謀した者(イスラム国傘下の支部組織)の資産や指導者、施設を攻撃する作戦計画を策定するよう指揮官に命じた」と述べました。

一部にこのテロ組織とタリバンが共謀している可能性を指摘する声もある中、バイデン大統領はタリバンを非難する言葉は一切口にしなかったのです。

それどころか、このテロを実行した過激派組織イスラム国傘下の支部組織を、「タリバンの宿敵」と名指ししたと言います。

一方のタリバンも、この危険極まりないイスラム国の支部組織の根絶を最優先課題と位置づけているようで、今回、首都カブールを制圧した際には、早々に刑務所に収容されている同組織の元リーダーを処刑しています。

また、2021年10月8日にイスラム教“シーア派”のモスクで発生した自爆テロに対して、タリバンの報道官は、「凶悪な振る舞いを断固非難する」とTwitterに投稿し、イスラム国に対して報復攻撃を実行する可能性を示唆しています。

タリバン政府の報道官

タリバン政府の報道官

我々日本人にとってみれば、「タリバンもイスラム国も似たようなもの」との印象がありますが、よくよく調べてみれば、組織の目標やテロ行為の特徴、アルカイダとの関係などでハッキリとした違いがあるようなんですよね。

そこで今回、そんなタリバンとイスラム国の成り立ちや関係、そして両者の違いについてわかりやすく総まとめしてみました。

タリバンとアルカイダの違いから見るイスラム国との関係について

イスラム過激派組織「イスラム国」は、中東のシリアとイラクにまたがる広大な地域に樹立を宣言し、勢力を伸ばしてきました。

この「イスラム国」という組織を理解するためには、同じイスラム過激派組織であるタリバンとアルカイダについて知っておく必要があります。

タリバンはアフガニスタン土着の過激派組織

タリバンが誕生したきっかけは、旧ソビエト連邦によるアフガニスタン侵攻でした。

1979年、当時、共産主義政権が危機に瀕していたアフガニスタンの内紛に乗じて、ソ連がアフガニスタンに攻め込んだのです。

ソ連によるアフガニスタン侵攻

ソ連によるアフガニスタン侵攻

ソ連としてはアフガニスタンがアメリカを中心とした自由主義陣営に取り込まれるのを防ぐための侵攻でしたが、ソ連は社会主義国家で、宗教を否定する立場をとっていました。

イスラム教徒の国家に“無神論者”が攻め込んできたわけですから、それに徹底抗戦するのはイスラム教徒にとっての聖戦を意味する「ジハード」です。

「ソ連に侵略されたアフガニスタンを守らなければ!」そんな旗印の下、アラブ諸国を中心にイスラム社会全体から「ムジャヒディン(イスラム聖戦士)」と呼ばれる義勇兵たちがアフガニスタンに集結したんですよね。

この動きがタリバン結成に繋がることになります。

アフガニスタンに集結したムジャヒディンたち

アフガニスタンに集結したムジャヒディンたち

1989年にソ連軍が撤退した後、アフガニスタンでは複数の部族間で小競り合いが始まるのですが、そんな中、1994年11月に結成されたのが「タリバン」というイスラム主義勢力でした。

タリバンは次第に支配地域を拡大していくと、1996年9月にはアフガニスタン全土をほぼ制圧し、政権を樹立しました。

つまり、タリバンはもともとアフガニスタンに住む人々が中心となって結成した土着の過激派組織なんですよね。

ちなみに「タリバン」は、アラビア語で「神学生」を意味する言葉です。と言うのも、タリバンは元々、イスラム神学校で教育・訓練された学生たちを中心に構成された組織だったからです。

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