ハイルブロンの怪人の概要

ハイルブロンの怪人とは、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州ハイルブロン市で起こった警察官殺人事件が発端です。その後、1993年から2008年にかけて南ドイツ、オーストリア、フランスで起きた40件余りの事件現場に残されたDNA全てが、警察官殺人事件と一致していたことから有名になった事件。

ハイルブロンの怪人の意味とは?

ハイルブロンの怪人の意味とは?

ハイルブロンの警察官殺傷事件と、他の国や地域で起こった殺人事件の現場から採取された女性のDNAが一致していたことから、当時は「国際的重大犯罪」と言われ、ドイツの警察では躍起になって捜査を行いました。

その後、同じDNAがオーストラリアやフランスなど、他国の薬物事件や窃盗事件の犯罪現場からも採取されていたことが判明。このような一貫性のない国際的連続犯罪において、1人の犯人が全ての事件に関わっているのは前代未聞の出来事です。

そんな謎めいた恐ろしい事件の犯人像から「ハイルブロンの怪人」と名付けられたようですが、事実はもっと複雑で、重大な過失につながっていきます。

以下で、この事件の複雑怪奇な「ハイルブロンの怪人」の詳細を紹介していきます。

ハイルブロン警察殺人事件について

ハイルブロン警察殺人事件は、2007年4月25日、ハイルブロンのテレージエンヴィーゼで警察官ミシェール・キーゼヴェッターが射殺され、同僚のマーティン・Aも頭部に銃弾を受け重傷を負った事件です。

警察官2人を死傷させた事件

警察官2人を死傷させた事件

休憩のため駐車場に停まっていたパトカーの中で、警察官のミシェール・キーゼヴェッターさんと、マーティン・Aさんが横たわっているところを通行人が発見します。

そのうち、22歳のミシェール・キーゼヴェッターさんが死亡しており、マーティン・Aさんは命はとりとめたものの重篤な障害を負ってしまいます。さらに、現場からは拳銃と手錠が奪われていました。

特別捜査委員会を設置

特別捜査委員会を設置

ハイルブロン警察は特別捜査委員会を設立し、当初はこの委員会が捜査を指揮しました。彼らは主に、警察官が使用した車から採取された痕跡サンプルからDNAが検出された無名の女性を捜索。

このDNAが発見された後も、同じDNAが他の事件現場でも多数検出されていたことから、犯人は全国的な規模で活動する重大犯罪者であり、冷血漢であると疑われ、指名手配ポスターなどを配布した大規模な捜索が集中的に行われます。

報奨金もかけられる

報奨金もかけられる

2009年1月には、指名手配中の女性の身元または居場所に関する情報に、30万ユーロの報奨金がかけられました。

しかし、規模が大きく、特別捜査委員会では手に余ってしまい、2009年2月11日にバーデン=ヴュルテンベルク州刑事局が捜査を引き継いだのです。

綿棒のDNAから割り出された事件の数々

あまりにも一致し過ぎるDNAの証拠から、2011年11月7日以降、犯行は右翼テロ組織「国家社会主義地下組織」によるものとされました。

また、綿棒から割り出された同じDNAは、以下の犯罪現場でも検出されていたのです。

・2001年3月24日、フライブルク・イム・ブライスガウにおける61歳男性殺害後の台所の引き出しから。

・2001年10月、ゲロルシュタインの薪の中にあったヘロイン入り注射器。

・2008年1月30日、ヘッペンハイムで殺害された3人のグルジア人の遺体を運搬するために使用された車から。

・2004年、アルボワでベトナム人宝石商を襲った強盗のおもちゃの銃から。

・2005年5月6日、ヴォルムスで兄弟喧嘩の弾丸に。

・2006年7月6日、オーストリアのマウトハウゼンの電気店での強盗事件。

・2006年10月3日、ザールブリュッケン市ブルバッハ地区の住宅兼商業ビルで起きた強盗事件。

・2007年3月、Gallneukirchenの眼鏡店で起きた強盗事件。

・2003年から2007年にかけて、ヘッセン、バーデン=ヴュルテンベルク、チロル、オーバーエスターライヒ、ザールラントで、さらに20件の窃盗、車やバイクの盗難事件。

・2008年3月23日夜、ニーダーシュテッテンの使われなくなった屋内プールで発生した侵入事件。

・2008年5月9日夜、ザールホルツバッハのクラブハウスで発生した女性暴行事件。

・2008年10月末、ヴァインスベルク近郊で遺体で発見された看護助手の車内。

以上の現場はほんの一例にすぎません。

以上のDNAは、バーデン=ヴュルテンベルク州、ラインラント=プファルツ州、ザールラント州など、オーストリアの少なくとも40の犯罪現場から採取されたサンプルからDNAが押収されました。

その痕跡は1993年までさかのぼり、多くの犯罪現場のいずれにも、犯人の痕跡がひとつもなかったことが不思議でした。また、犯人を見たという目撃者や指紋・毛髪・繊維・靴跡などの痕跡も一切ありませんでした。

綿棒のDNAの謎に迫る

オーストリアのDNA中央研究所で実施されたミトコンドリアDNAの検査の結果、そのDNAは東ヨーロッパとロシア連邦に隣接する地域に集中している特徴があることが判明しました。

未知の容疑者のDNAが、飲料缶と、ザールブリュッケンの学校で強盗事件が発生した後、行方不明になっていた男性の遺体からも指紋からも発見されたのです。それにより、DNAが本当に犯人のものなのか、疑問が強まることに。

常に同じDNAが検出されることの検証

常に同じDNAが検出されることの検証

全ての現場に同じ犯人がいたという事実はさておき、常に同じDNAが検出されるということのさまざまな説明がされていました。

第一に、DNAの偽証によるもの。しかし、これは困難であり、あり得ないとされました。

第二に、唾液、汗、血液、皮膚細胞などのDNAが採取された痕跡が、異なっていたことです。これは、1900年代後半から2000年代初頭という時代的に考えてありえないか、よほど先見の明があったかだという結論に達しました。

第三に、全てが同じDNAであるため、犯罪は同一人物のグループでなければならなかったのですが、事件が起こった期間や犯行の違いから考えて、その可能性は極めて低いということで、除外されました。

DNAの汚染の可能性について検証

DNAの汚染の可能性について検証

以前から、分析する際の機器が汚染されているのでは、という憶測がされていました。上述していることが除外されるならば、分析過程でのミスではないかという問題が浮上。その際に使用された綿棒に問題があったと推測されました。

検出されたDNAは、綿棒の製造過程で付着した可能性があるかもしれないということです。それは、綿棒の製造過程ではなく、綿が摘み取られた時に付着したDNAであると想定しました。

その根拠は、「ハイルブロンの怪人」のDNAが発見された全ての捜査機関である警察が、フリッケンハウゼンのグライナー・バイオワン社から綿棒キットを入手していたことからです。

明確なのは、別の業者から綿棒を入手していた警察機関の検査結果からは、同じDNAが検出されなかったのです。

付着していた綿棒から出たDNAは、オーバーフランケンのテタウ・ランゲナウにある包装会社の、ベーム・クンストッフテクニークの従業員のものであることが判明。

そこでは、中国から輸入された木製の綿棒に、手作業で綿が取り付けられ、プラスチックチューブに梱包されていたことがわかりました。

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