一連の調査結果から、「ハイルブロンの怪人」のDNAと言われた綿棒から検出されたDNAは、綿棒の製造会社の従業員のものであることが判明し、当時の犯罪における科学捜査体制のずさんさが明るみに出ることとなります。

ハイルブロン警察殺人事件の真相

これまでの成り行きから、ドイツの新聞フランクフルター・アルゲマイネは、この出来事について「戦後のドイツ警察の歴史で最もお粗末」と評しています。

ハイルブロンの怪人がハイルブロン警察殺人事件の真犯人ではなかったことから、2011年になってようやく殺人事件の捜査が新たな展開を見せます。

犯人は「国家社会主義地下組織」の男2人

犯人は「国家社会主義地下組織」の男2人

2011年、音楽家のバッハの出生地で知られているアイゼナハで、銀行強盗を犯し、キャンピングカーで逃走したネオナチの男2人(ウーヴェ・ムントロースとウーヴェ・ベーンハルト)が、警察の追及から逃れるために、車に火をつけて焼身自殺を図りました。

その直後に、残された女性メンバーが証拠隠滅のために家を爆破させます(写真の家)。この家は、旧東独ツヴィッカウで「国家社会主義地下組織」が使用していた住宅。爆破された後の画像です。

殺された警官の拳銃が車内から見つかる

殺された警官の拳銃が車内から見つかる

焼身自殺事件の捜査をしていた警官が車の焼け跡を調べると、ハイルブロン警官殺人事件の犠牲者である警官の拳銃を見つけます。

犠牲者の1人である女性警官のミシェレ・キーゼヴェッターは、チューリンゲンにあるNSUが運営する右翼集会用ゲストハウスの向かい側に数年間住んでいました。

そのことから、犯人との因果関係があったのではないかと当時の連邦捜査局局長イェルク・チールケさんが主張していました。

しかし、彼女の祖父によって否定されています。

テロメンバーは多くのテロ活動で多数の犠牲者を出していた

テロメンバーは多くのテロ活動で多数の犠牲者を出していた

自殺した男性2人と家に火を放った女性1人は、ツヴィッカウを拠点に「国家社会主義地下組織」という極右テロ組織を作り、ハイルブロンの警官を殺害する前からも殺人を犯していました。

ドイツ各地でドネルケバブ屋(ドネル連続殺人)や、インターネットカフェを経営するトルコ人移民やギリシャ人移民(ボスポラス連続殺人)など、合わせて9人を殺害。更に、2004年にケルンのトルコ人街で、爆弾テロを起こして22人を負傷させていたことが後に判明しています。

このような連続テロ事件はドイツでは初めてのことで、当時のドイツ国民を震撼させています。

2013年3月21日、殺された犠牲者の慰霊碑が、ニュルンベルクのオペラハウスの向かいに建てられました。

ハイルブロンの怪人を教訓にした現在の科学捜査の基準

「ハイルブロンの怪人」における科学捜査でのずさんな体勢から、「戦後のドイツ警察の歴史で最もお粗末」と言われ、この事件を機に国際標準化機構で綿棒の規格化を推し進めます。

「ハイルブロンの怪人」でのDNA混入が科学捜査の失敗をもたらしたことを教訓に、国際標準化機構では科学捜査における綿棒や他のアイテムの規格化を進めるため「ISO/TC272」を定めます。

要するに、測定前のプロセス等に関する国際標準化ということで、科学捜査で使用する以前の、製造工程を厳格化したものです。

これにより、2016年に発行された規格「ISO 18385」(科学捜査のための生体物質の収集、保管及び分析に使用する製品のヒトDNA混入のリスク最小化−要求事項)が制定されました。

捜査に使う綿棒など様々な消耗品に、人間のDNAが混入しないための要求事項を定めています。そして、この規格を満たすための特殊な綿棒は、通常の綿棒の100倍以上の値段で販売されているということ。

「ハイルブロンの怪人」は戦後のドイツ警察の歴史で最もお粗末な捜査!【まとめ】

以上、「ハイルブロンの怪人」について解説してきました。事件の内容は単純そのものですが、科学捜査での解説が入ると、かなり複雑になり、わかりにくかったかもしれません。

まとめますと、ハイルブロン警察殺人事件の科学捜査で見つかったDNAが、ドイツ全域やオーストラリアやフランスでの殺人事件、窃盗事件、麻薬事件などのDNAと全てが一致したことから起きた、奇々怪々な成り行きとなってしまいました。

原因はDNA鑑定に使われた綿棒で、綿棒製造工程の段階で工場勤務の従業員のDNA付着によるものだったということ。犯罪とは一切関係のないところで惑わされた捜査は混迷を極め、ドイツ全域を巻き込む大捜査となってしまいました。

原因が解明された結果、ハイルブロンの怪人事件は「戦後のドイツ警察の歴史で最もお粗末な捜査」として歴史に残りました。

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