ヴォイニッチ手稿に記述されている文章は、自然言語または人工言語で、でたらめな文字列ではないと判断されました。また、植物の絵に関しては、とても精巧に描かれてはいるものの、現存する植物の種類に当てはまるものがないということ。

以上のことから、どんな意味でこれほど詳細な、架空のものと考えられる、植物の挿し絵が入っているのかの理由はわかっていません。また、描かれた人物のほとんどが全裸であることから、服飾の文化や時代の推定も困難となっています。

Voynich manuscript. All pages scanned (undeciphered language)

出典:YouTube

ヴォイニッチ手稿の解読を試みる

1912年に、イタリアで発見された古文書のヴォイニッチ手稿は、何人もの著名な言語学者や暗号解読研究者の手によって解明を試みられましたが、現在も内容の解明はされておらず、謎の怪文書として歴史に名を刻まれています。

そんなヴォイニッチ手稿の解読に挑んだ人たちの、ヴォイニッチ手稿の意味や仮説を辿っていきます。

ヴォイニッチ手稿解読説①:ウィリアム・フリードマンの説

暗号解読者で、第二次世界大戦の時に日本軍のパープルコードを解読したことで知られるウィリアム・フリードマン氏が、1945年にヴォイニッチ手稿解読に挑戦しています。

しかし、解読成功には至らなかったということ。彼の持論では、ヴォイニッチ手稿は暗号というよりも人工言語の類ではないかと示唆しています。

ヴォイニッチ手稿解読説②:レオ・レヴィトフ

レオ・レ​​ヴィトフ博士は、ヴォイニッチ写本を解読した結果、それが中世のカタリ派宗教の典礼書であることが判明したと、1987年に出版した著書で主張しています。

彼は、カタリズムは実際にはエジプト・ギリシャ・ローマの女神、イシスの古代カルトの生き残りであると主張し、ヴォイニッチ手稿は安楽死の儀式であるエンデュラのための典礼書であると主張。

しかし、実際のところ、カタリズムがキリスト教の変形形態であり、人生の終わりに行われる終末断食であるエンデューラは、カタリズムの非常に後期の習慣であり、レビトフの記述とは合わないことを示しています。

ヴォイニッチ手稿解読説③:スティーブン・バックス

2014年、ベッドフォードシャー大学の言語学者であるスティーブン・バックス氏は、ヴォイニッチ手稿の一部の解読に成功したことを発表しました。

その内容は、ヴォイニッチ手稿の中の植物の挿し絵が、アラビア語やヘブライ語などの言語における呼称を、手稿の中の文字の出現パターンに当てはめる手法だということ。

その結果、印欧語族に属する言語ではなく、セム語族あるいはコーカサス諸語に属する言語、またはさらに東のアジア人の言語で記されていることがわかったそうです。

わかりやすく記しますと、「ヴォイニッチ手稿の言語は、おそらくヨーロッパ語ではなく、近東語、コーカサス語、アジア語である可能性が高い。」ということです。

しかしこれは、あくまでも可能性であって、解読ではありませんでした。

出典:YouTube

イェール大学のバイネキー稀少本・原稿図書館の奥深くに240ページの不思議な本が眠っています。最近、放射性炭素の年代測定で1420年代のものと判明し、輪が連なったような手書きの文字や、夢から飛び出してきた様なイラストが特徴です。この本は「ヴォイニッチ手稿」と呼ばれ、今まで誰もそこに書かれている内容を解明した人はおらず、歴史上最大の未解決の謎の一つとされています。スティーブン・バックスはこの不可解な本の解明に取り組んでいます。 講師:スティーブン・バックス、アニメーション:TED-Ed *このビデオの教材:http://ed.ted.com/lessons/the-world-s-most-mysterious-book-stephen-bax

ヴォイニッチ手稿に新たな有力な解読者が加わる!

これまでの100年の間に、以上のような有力と思われる解読が検証されましたが、いずれも可能性の域を越えることはありませんでした。

しかし、2019年4月にイギリス・ブリストル大学の言語学者ジェラルド・チェシャー教授が、たった2週間でヴォイニッチ手稿の解読に成功したと発表。

チェシャー教授は、手稿に書かれている文字の組み合わせに着目し、その特徴を検証した結果、「ロマンス祖語」が使われていると推測しました。

ロマンス祖語は中世の地中海地域で使われていましたが、公式文書に用いられることがなかったため、後世に残されることがなかったということです。

チェシャー教授は、その表記ルールを解明して、ヴォイニッチ手稿の内容が徐々に明らかになってきました。

手稿はアラゴン王国の王妃マリア・デ・カスティーリャのために、ドミニカ修道女が書物として編集したものであるということ。

手稿の中の女性の挿し絵には、カスティーリャ王妃が夫に代わりアラゴン・カタルーニャを統治していたと思われる、貿易交渉の絵が描かれています。

上の絵は、死産で産まれた赤ちゃんの絵で、文字の意味は「死んだ赤児」です。

このように、女性が入浴する姿や流産や死産などの絵も描かれており、正に王妃のための手稿だったという説は濃厚となっています。

チェシャー教授は「今回解明された言語表記ルールを活用して、専門家たちと内容の解読作業を進めていく予定だ」と話していました。

ヴォイニッチ手稿の作者を考察

以上、ヴォイニッチ手稿の内容や解読などを解説してきましたが、実際の作者は一体誰なのでしょう。

上述していますチェシャー教授の解読では、ドミニカ修道女がヴォイニッチ手稿の作者だとしています。しかし、古くから作者として挙がっている候補が2人いますので、そちらも解説していきます。

ヴォイニッチ手稿の作者をイングランドの学者、ロジャー・ベーコンとする説

イングランドの学者、ロジャー・ベーコンが作者だとする説です。彼はもともと莫大な資産のある家系に生まれましたが、ヘンリー3世の時代に政争に巻き込まれ、資産も地位も失ってしまい、その後修道会フランシスコ会に入って、聖職者として活動していました。

彼は人並外れたIQの持ち主で言語学に長けていたことから、ヴォイニッチ手稿を作り、薬草学に関する知識や見解を宗教的迫害から守るため、非常に特殊な暗号を使って記載したのではないかとされています。

ヴォイニッチ手稿の作者をイングランド生まれの錬金術師、エドワード・ケリーとする説

イングランド生まれの錬金術師であるエドワード・ケリーを作者とする説です。

彼はジョン・ディーという錬金術師と組んで、霊媒師としても活動していました。しかしその裏で、錬金術ブームに乗じて詐欺行為的なことをやっていたという噂もあったのです。

その頃、錬金術に傾倒していたルドルフ2世を利用して金儲けをしようと企て、ヴォイニッチ手稿を作ったと言われています。

何とも胡散臭い話ですね。エドワード・ケリーは、後にルドルフ2世に逆らったとして投獄されたということ。

ヴォイニッチ手稿の過去から現在までの所在の歴史を辿る

ヴォイニッチ手稿の内容や解読者、作者などを考察してきましたが、いずれも想像の域を超えることはできませんでした。

それでは、ヴォイニッチ手稿が100年ほどの間に誰の手に渡っていたのかを調べると、この謎の歴史が明らかになるかもしれません。

錬金術師ゲオルグ・バレシュから親友ヤン・マレク・マルチへ

ヴォイニッチ手稿が最後に発見されたのが1912年のことで、古物商で愛読家のウィルフォリド・ヴォイニッチでした。そこから遡ること270年余り前の1693年に、チェコ・プラハの錬金術師ゲオルグ・バレシュが、イエズス会の言語学者アタナシウス・キルヒャーに宛てた手紙でした。

ゲオルグ・バレシュはその時、手元にヴォイニッチ手稿を持っており、アタナシウス・キルヒャーに趣向の解読を頼むために書いた手紙だったのです。

アタナシウス・キルヒャーは、解読を試みますが失敗に終わります。しかし、手稿に興味を持って譲り受けることを願い出ます。バレシュは、その時断っているということ。

その後バレシュは、親友のヤン・マレク・マルチにヴォイニッチ手稿を渡し、マルチからキルヒャーに渡ったようです。その時、マルチからキルヒャーに宛てた手紙によって、手稿の所有者の遍歴が明らかになっています。

関連するキーワード

関連するまとめ

スープおじさんの意味と死因!画像や動画・ドロドロの原因・解説まとめ

ネットで話題の「検索してはいけない言葉」として、スープおじさんの意味が話題になっています。また、スープおじさ…

cyann3 / 225 view

レーガン大統領暗殺未遂事件の犯人と現在!死者とSP・裁判判決やその後を総まとめ

1981年3月に暗殺未遂事件に巻き込まれたレーガン大統領。この事件はなぜ起こってしまったのでしょうか?今回は…

aquanaut369 / 73 view

ホアキン・グスマン(麻薬王)の現在!身長と資産・息子や女性関係・映画などの話題まとめ

メキシコの「麻薬王」と言われるホアキン・グスマンさんの生い立ち、身長と資産、女性関係・息子、そして映画・現在…

cyann3 / 121 view

グリーン姉さんの本物の画像!生前と死因・スープおじさんとの比較まとめ

ネットで話題の「検索してはいけない言葉」として、グリーン姉さんの画像が話題になっています。また、グリーン姉さ…

cyann3 / 590 view

ジェフリー・ダーマーの生い立ちと家族!父親や兄・事件詳細と関連映画も総まとめ

ジェフリー・ダーマーとは、1978年から1991年にかけて青少年17人を殺害し、屍姦や死体切断をした上にその…

Mrsjunko / 180 view

ナイアガラの滝の日本人/徳升彩乃さん転落死亡事故の詳細!場所や行き方も総まとめ

2011年8月14日にカナダで起こった「ナイアガラの滝転落事故」で死亡した、日本人女性の徳升彩乃さんのことが…

Mrsjunko / 1022 view

リーマンショックの原因と影響!日本の日経平均株価・為替・チャートなどわかりやすく解説

2008年9月、アメリカの有力投資銀行である「リーマンブラザーズ」の経営破綻が原因で発生したリーマンショック…

cyann3 / 113 view

同じカテゴリーの記事

同じカテゴリーだから興味のある記事が見つかる!

黒人アルビノ狩りや人身売買の実態や対策を総まとめ

先天的にメラニンが欠乏する遺伝子の疾患アルビノ。日本にもアルビノの人はいますが、アフリカに生まれた黒人のアル…

aquanaut369 / 115 view

アマンダノックスの現在!事件の真相と真犯人・関連映画まとめ【ペルージャ英国人留学生殺…

2007年11月2日に起こった「ペルージャ英国人留学生殺害事件」の犯人とされたアマンダノックスですが、有罪判…

Mrsjunko / 239 view

世界のテロ事件100選・衝撃ランキング【最新決定版】

テロ事件といえば、アメリカ同時多発テロが思い浮かびますが、現在でも日々世界中でテロ事件は多発しています。今回…

maru._.wanwan / 295 view

シャロン・テート事件と犯人の現在!マンソン・ファミリーや殺害現場・その後も総まとめ

1960年代に人気を集めた女優のシャロン・テート。人気絶頂のときにチャールズ・マンソン率いるマンソン・ファミ…

aquanaut369 / 361 view

ヤノマミ族の現在!出産と子供殺し・コロナ感染も総まとめ【写真付き】

ヤノマミ族とは、アマゾン川流域からオリノコ川にかけて、広く分布している南アメリカ大陸の先住民部族です。そんな…

Mrsjunko / 156 view

ゼレンスキー大統領のコメディアン時代と“股間ピアノ”の持ちネタまとめ【動画あり】

ロシアに一歩も怯まず、「どんなことがあっても母国を守り抜く」という覚悟を、ウクライナ国民のみならず、全世界に…

passpi / 108 view

アステカの祭壇の心霊写真や場所!生贄や心臓・アンビリバボー・映画の話題まとめ

有名な心霊現象である「アステカの祭壇」について、場所と写真についての話題が挙がっています。また、生贄の心臓、…

cyann3 / 118 view

アクセスランキング

人気のあるまとめランキング

スポンサードリンク

"); } })(jQuery);