ティリクム・シャチ事件はなぜ起こったのか?原因を解説

シャチの攻撃には段階がある

シャチの攻撃には段階がある

捕獲されたシャチによる人間への攻撃は、主に、食害、水中体当たり、水中保持があります。

餌やりやショー中にシャチが調教師に噛みつくのは、一般的に見られる最も穏やかな攻撃性ということ。

エスカレートすると調教師を水中に引きずり込み、意識を失うか溺れるまで水中に拘束することがあります。この行為が最も攻撃性の高い行為のようです。

ティリクムの苦痛に満ちた環境

ティリクムの苦痛に満ちた環境

ティリクムの事件では、死亡した3名全員が水中に引きずり込まれたものと思われます。

事故のあった水槽にはティリクムだけではなく、他のメスのシャチ、ハイダ2号とヌートカ4号がいたことがわかっています。シャチは年長のメスを中心とする母系社会構造で成り立っているのです。

そこに若いオスのティリクムが突然参加し、2頭のメスたちからいじめられ、狭い部屋へと移されてしまいます。ティリクムにとっては苦痛の何ものでもなかったはず。

ハイダ2号とヌートカ4号は、ティリクムの皮膚を血が出るまで歯でかきむしるという、ティリクムに対する長年の虐待と残酷な行為が、ティリクムを攻撃的なシャチにしたようです。

ティリクムの攻撃性はストレスが原因なのでは

ティリクムの攻撃性はストレスが原因なのでは

当時シーランドの動物訓練責任者だったスティーブ・ハクスター氏は、「彼らはプールの中でこれほどコミュニケーションのある遊びをしたことはありませんでした。ドーン・ブランショーの死に関連してこの事件が再浮上したときには、20年以上前のことであったため、3頭のシャチの公式な動機は確立されていない。」

「私たちがどれくらいの頻度で呼吸しているか、シャチは知らないと思う。問題は、シャチが他にすることがないということです」と説明しています。

「彼らは退屈している。彼らは退屈しているんだ。まるでトイレで一生を終えるようなものです」とも語っていました。

ティリクム事件を描いたドキュメンタリー映画『ブラックフィッシュ』について

飼育下のシャチをめぐる論争を描いている

飼育下のシャチをめぐる論争を描いている

『ブラックフィッシュ』は、ガブリエラ・カウパースウェイト監督による2013年のアメリカのドキュメンタリー映画です。

シーワールドで飼育されているシャチのティリクムと、飼育下のシャチをめぐる論争を描いています。

この作品は、2013年1月19日のサンダンス映画祭でプレミア上映され、マグノリア・ピクチャーズとCNNフィルムズによって広く公開。BAFTA賞ドキュメンタリー部門にノミネートされました。

映画『ブラックフィッシュ』の概要

映画『ブラックフィッシュ』の概要

このドキュメンタリーは、3人の死者を出したシャチのティリクムの飼育と、シャチを飼育することの結果に関するものです。

ティリクムの取材には、1983年のアイスランド沖での捕獲と、太平洋シーランドでのハイダ2世とヌートカ4世による嫌がらせが含まれています。カウパースウェイトは、こうした事件がシャチの攻撃性を助長したと主張。

この映画には、Nonhuman Rights Project(非人権プロジェクト)の科学ディレクター、ロリ・マリノ氏の証言も含まれています。カウパースウェイト氏はまた、飼育下のシャチの寿命は野生と同等であり、通常オスで30年、メスで50年であるという、シーワールドの主張にも焦点を当てているということ。

野生で捕獲されたシャチは、幼少期に極度のストレスを経験し、水族館で一生を過ごし、ショーや繁殖を強要された結果、他のシャチや人間に対して攻撃的になったと主張。

この映画では、ティリクムをはじめとする飼育下のシャチたちがトレーナーを襲う映像や、目撃者へのインタビューが収められています。

ダニエル・P・デュークスさんの事故では、ティリクムの直接的な被害者というよりも、不法侵入者であり迷惑者であるとメディアによってみなされていましたが、この映画の公開によって彼に対する認識は覆されました。

Blackfish - Official Trailer

出典:YouTube

ティリクム事件の動画について

ティリクムが実際に被害者のケルティ・リー・バーンさんやダニエル・P・デュークスさん、ドーン・ブランショーさんを襲っている動画はYouTubeでは見かけられませんでした。

しかし、上記のブラックフィッシュを見てもらえば、どちらが悪いことをしているのかが理解できるでしょう。

写真のようにシャチに襲われているシーンは、どちらの側にも気の毒であることには変わりありませんね。

ティリクム・シャチ事件の現在

ティリクムは残念ながらこの世を去っていますが、彼の子孫たちが数多く存在しています。

ティリクムには21頭の子孫がおり、そのうちの10頭が存命しているということ。あのいじめていたメスのシャチ2頭との子供までいました。

映画『ブラックフィッシュ』の影響で、風向きが変わったシーワールド側は、2016年にシャチの捕獲や人工授精を取りやめると発表。

また、サンディエゴのシーワールドでもシャチのショーを廃止することを2015年に公表しました。

ティリクムが人間に訴えたかったこと【まとめ】

シャチのティリクムは、わずか2歳のときに捕獲されて人間の欲望の犠牲にされました。曲がった背びれとその巨大さから人気となったティリクムでしたが、大海原から小さなプールに移され、先輩のシャチにいじめられたストレスから、3人の人間を死に至らしめてしまいました。

ティリクムには悪気があったわけではなく、広い海に返して欲しいと訴えていたに違いありません。

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