ライト兄弟には金儲けをする欲望がなかった

ライト兄弟には金儲けをする欲望がなかった

そのため、ライト兄弟には科学的な知識がなく、行き当たりばったりのやり方で飛行機を作ったという噂が広がっていました。それに対してライト兄弟は気にすることもなく、それを正そうとすることはなかったそうです。

彼らはこの実験を世に送って金儲けをするなどという欲望は微塵もなかったのです。

金儲けはしないが実験の費用と生活費は欲しい

金儲けはしないが実験の費用と生活費は欲しい

ただ飛行機を作って実験するのが好きで、ライト兄弟が幼い頃、父親に買ってもらった飛行機の模型で遊ぶ感覚だったのでしょう。

また兄弟は、この研究を売って金儲けをするという事業家の素質も才能もないと思っていたようです。しかし、飛行機の発明にかけた費用は、何かの形で貰いたいというささやかな欲望はありました。

特許を取ってお金を貰う!

特許を取ってお金を貰う!

貰ったお金を次の研究費や生活費に充てたかったのです。ライト兄弟は、宣教師という父親の職業から、つつましい生活が好きだったようです。

そんな事情から、2人は自分たちの発明の特許を取得し、自分たちは特許料で好きな実験をして暮らすという計画を立てていました。その計画は簡単にできるという自信を持っていたのですが…

1906年に米国特許を取得

1906年に米国特許を取得

ライト兄弟は1906年5月22日に、動力を持たない飛行機械グライダーの特許を取得しました。1904年にはフランスとドイツでも特許を取得。

グレン・カーチスと他の初期の飛行士が特許に記載され、ライト兄弟が公の飛行で実証した横方向制御を動作させるための蝶つがいでとめた補助翼を考案しました。

グレン・カーチスに特許の侵害を警告

グレン・カーチスに特許の侵害を警告

その後、1908年7月4日に、グレン・カーチスが、補助翼を使用しての歴史的な1キロメートル飛行に成功。それに対してライト兄弟は、補助翼を使用した航空機の飛行や販売で利益を得て特許を侵害しないようカーチスに警告しました。

カーチスは当時、アレクサンダー・グラハム・ベルが会長を務める航空実験協会(AEA)の会員であり、1908年にはAEAホワイトウィングとして知られる第2飛行場用の翼端補助翼の再発明に貢献していました。

そして訴訟が始まる

そして訴訟が始まる

そんなカーチスは、「補助翼は自分で考案したものだ」として、ライト兄弟へのライセンス料の支払いを拒否し、1909年に補助翼を備えた飛行機をニューヨーク航空協会に売却したのでした。

その後、ライト兄弟とグレン・カーチスの訴訟が始まりますが、この訴訟に時間を取られてしまい、飛行機を改良する時間を持てなくなってしまいました。

飛行機にかける時間がない

飛行機にかける時間がない

その間にも他のライバルたちによって、飛行機の技術はどんどん進んでいき、ライト兄弟の技術は、どんどん時代遅れになってしまいます。その後、ライト兄弟の影は薄くなり、忘れ去られていきます。

失敗は成功を上手く活用できなかったこと

失敗は成功を上手く活用できなかったこと

さらに、兄のウィルバーが腸チフスで45歳で亡くなり、その3年後には、弟のオーヴィルも飛行機作りをやめ、ライト兄弟は飛行機の世界から完全に姿を消してしまうことに。

ライト兄弟の失敗は、せっかく手にした成功を、自分たちの信念から上手に使えなかったことにありました。

ライト兄弟の特許戦争

ライト兄弟がグレン・カーチスを訴える

ライト兄弟がグレン・カーチスを訴える

1909年、ライト兄弟はカーチスの飛行機に使っている蝶つがいでとめた補助翼は、自分たちの特許に抵触するものだと主張し、裁判所に訴えました。

5年間にわたる裁判の結果、1914年にライト兄弟の主張が認められ、カーチスは裁判に破れることに。

両方の特許が政府に買い上げられる

両方の特許が政府に買い上げられる

しかし、カーチスは控訴し、補助翼の仕組みをちょっとだけ変えて、その後も飛行機の生産を続けていました。それに対してオービル・ライトは、少しばかり変えても、自分たちの特許に抵触すると主張して訴えます。

再び裁判が続き、結局1917年に、第一次世界大戦という非常時のため、両方の特許が政府に買いあげられることになって、裁判に終止符が打たれます。

カーチスの弁護士が入れ知恵をする

カーチスの弁護士が入れ知恵をする

しかし、裁判の最中にカーチスの弁護士が何を思ったのか、「裁判所がライト兄弟の肩をもつのは、彼らが世界最初の飛行機の発明者となっているからで、ライト兄弟の特許が飛行機を飛ばすために絶対必要なものだと思いこんでいる」と、カーチスの耳元で囁いたということ。

さらに、「もしもライト兄弟より前に、彼らの特許を使わないで飛べた飛行機があったとすれば、彼らの主張は効力がなくなってしまう」とアドバイスし、カーチスは深くうなずいたそうです。

スミソニアンとの闘い

ラングリーの飛行機は飛ぶのか?

ラングリーの飛行機は飛ぶのか?

偶然ですが、カーチスとその弁護士の話が出たときに、スミソニアンでもラングリーの飛行機が実際に飛ぶのか試してみたいと考えていたようです。

飛行実験をする

飛行実験をする

1903年に2度に渡り発射台から飛び立たせましたが、2度とも川に突っ込んでしまいます。しかし、飛び出す前に壊れていたからだということ。そのため、完璧な状態での飛行実験は行われていませんでした。

ラングリー機を修復

ラングリー機を修復

もしも完璧な状態で飛べるとしたら、人類最初の人間が乗って飛べる飛行機を作ったのはラングリーという事になります。スミソニアンではラングリー機の実験を試みることにしました。

カーチスはすすんで壊れているラングリー機を修理することを申し出たのです。因みに、スミソニアン側は、ライト兄弟との確執があることは全く知りませんでした。

5秒間水面を離れて飛んだ

5秒間水面を離れて飛んだ

修理が始まると、カーチスは作業場のまわりを塀で囲い、仕事中の様子を誰にも見せませんでした。やがて修理が終わり、飛行実験を行ったところ、5秒間水面を離れて飛んだのです。

ラングリー機が世界最初の飛行機

ラングリー機が世界最初の飛行機

スミソニアンでは大喜びで、『人間を積んで空中に浮かび、自由に飛ぶことのできる世界最初の飛行機』というラベルをつけ、航空博物館に展示しました。

オーヴィル・ライト怒り心頭!

オーヴィル・ライト怒り心頭!

そのためライト兄弟の飛行機は、『初めて実際に飛んだ飛行機』とラベルに付け替えるという連絡が入りました。これにオーヴィルは怒ります。オーヴィルは、ラングリー機は飛び上がることができないことを見抜いていたからでした。

調べてみると、修理されたラングリー機は30カ所以上にもわたって新しく改良されていたのでした。スミソニアン側は、オーヴィルの検証を認めることなく、長い年月が経ちます。

ライト・フライヤーをロンドンの科学博物館に送る

ライト・フライヤーをロンドンの科学博物館に送る

1923年にロンドンの科学博物館から、ライト兄弟の飛行機を歴史上の記念物として陳列したいので、イギリスへ送ってほしいという要望が入ります。

それから5年後の1928年に、オーヴィルは飛行機をロンドンへ送る決意をしました。これが世間に広まると、「この歴史的な飛行機を国外にもち出すとは何事だ。国の恥ではないか。」という非難がオーヴィルを襲いました。

オーヴィルの攻撃

オーヴィルの攻撃

オーヴィルは、「この方法だけがスミソニアンに対するただ一つ残された抗議だ」と声明を発表。すると、白羽の矢はスミソニアンに向かいます。そして、ラングリー機の真相も明らかにされ、スミソニアンの立場は悪くなる一方に。

スミソニアンがライト兄弟を認める

スミソニアンがライト兄弟を認める

ついに頑固なスミソニアン協会も降参します。1942年、スミソニアン協会の会長アボットはこの調査の結果を公表し、「ライト兄弟は1903年、空気より重い飛行機で世界最初の飛行に成功した。」と、ライト兄弟のほうが先だということをハッキリ声明しました。

ライト兄弟の功績は人類が空を飛ぶ原理を発見したこと【まとめ】

ライト兄弟は欲望に溺れることなく、ただひたすらに飛行機への探求心を注いできました。欲深い人間が、その功績を我が物にしようとし、ライト兄弟の研究をさえぎってしまったのが残念でなりませんでした。

父親のお土産であるアルフォンス・ペノーの飛行機のおもちゃから始まった遊びは、人類に飛行の技術を残し、航空時代の礎を築いたのです。

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