動機は観光業の崩壊

動機は観光業の崩壊

テロ攻撃の動機は主にムバラク政権を狙っていましたが、観光業の崩壊はエジプト経済に壊滅的な影響を与えることから、イスラム主義者は観光客を嫌っていました。

そんな経緯から、ガマアの代表タラート・フアド・カシム氏は、「観光業は卑劣で、売春とエイズを広めるためのユダヤ人女性による策略だ」と語っていました。

2か月前の9月18日にはドイツ人観光客9人が殺害される

2か月前の9月18日にはドイツ人観光客9人が殺害される

事実観光客は激減し、エジプト政府は1995年から観光地の警備を強化して、武装原理主義者の大規模な取締りを行っていました。

この事件から2か月ほど前の9月18日、カイロのエジプト考古学博物館前に止まっていた観光バスが襲撃され、ドイツ人観光客たち10名が死亡。エジプト人15名が負傷するテロが起きました。

そのためドイツ外務省は安全保障上のリスクを指摘し、エジプト中部への旅行に対して警告していました。

この事件の被疑者には、10月30日に死刑が宣告されていましたが、この裁判に報復する目的から、1993年の世界貿易センタービル爆破事件の首謀者であるオマル・アブドッラフマーンが組織したイスラム原理主義テロ集団のイスラム集団が計画したのが、このテロ行為でした。

ルクソール事件の犠牲者

犠牲者は外国人観光客58名とエジプト人4名

犠牲者は外国人観光客58名とエジプト人4名

ルクソール事件では、外国人観光客58名とエジプト人4名(警察官3名と観光ガイド1名)を含む合計62名の犠牲者を出しました。

死亡した旅行者は、スイスからの旅行者が36名、ドイツ人旅行者4人、イギリス人の5歳の子供 (ショーナ ターナー)を含む6人、コロンビアの旅行者2人、そして新婚旅行中の日本人カップル4組を含む10人となっています。

日本人犠牲者のほとんどが新婚旅行のカップルだった

日本の旅行業者は「バヒ・トラベルエージェンシー」

日本の旅行業者は「バヒ・トラベルエージェンシー」

ルクソール事件の犠牲者を出してしまった旅行を手配したのは、死亡した日本人観光客9人全員が、エジプトで起業された観光会社「バヒ・トラベルエージェンシー」だったことがわかりました。

ゼネラルマネージャーの中野正道氏は、事件を聞きつけてすぐに現地に飛びました。

多くの遺体は額に一発の小さな銃創とのどを切り裂かれていた

多くの遺体は額に一発の小さな銃創とのどを切り裂かれていた

中野正道氏の話では、死亡した多くの方は額に一発の小さな銃創があり、のどを切り裂かれていたということ。頭の後ろには銃創が無残に広がり、脳みそごと吹っ飛んでいたのです。のどの傷はカラシニコフの先端に装着した銃剣でトドメを刺したものらしいという説明を受けました。

最初に犯人と遭遇したのが日本人グループだった

最初に犯人と遭遇したのが日本人グループだった

その後中野氏はカイロに帰り、日本人旅行者の遺体と対面しました。

その時の衝撃を振り返り、「現場に突入してきたテロリストたちに、最初に遭遇したのが日本人グループでした。先頭にいたのが日本側代理店の女性添乗員さんで、出合い頭に撃たれたようです。

30㎝程度の近さで顔面に発射された銃弾の威力はすさまじく、むごすぎる姿になっていました。あまりにも突然で、彼女は恐怖を感じる間もなかったのではないでしょうか」と語っています。

亡くなった10人中8人が新婚旅行中のカップル

亡くなった10人中8人が新婚旅行中のカップル

2日後の深夜には、日本から遺族たちがカイロ空港に到着し、遺体が安置されている場所まで案内したそうです。亡くなった10人中8人が新婚旅行中のカップルだったことから、その変わり果てた姿に遺族たちは茫然とする方や泣き崩れる方など、様々な反応を見せていたということでした。

早すぎる観光復帰

早すぎる観光復帰

その翌朝に現場のルクソールまで行くと、血だまりは全てきれいに洗い流されて、テロ事件などなかったかのように通常通り観光を楽しんでいる人たちの姿を目にしました。

そんな光景を、遺族たちはどんな思いで眺めていたのでしょう。あまりにも早すぎる観光復帰に、エジプトの経済状況が伺い知れるようです。これが現実。

ルクソール事件から一夜明けた現場を歩く米国人観光客らの写真。

ルクソール事件のその後と現在

スイスの衝撃は大きかった

スイスの衝撃は大きかった

ルクソール事件のニュースはスイス当局にも届きましたが、当初当局は大惨事の規模を認識できていませんでした。FDFA(連邦外務省)は特別スタッフを設置。従業員数名はすぐにエジプトへ飛びました。

遺留品が雑に扱われ身元確認が困難に

遺留品が雑に扱われ身元確認が困難に

一方、負傷者はカイロに運ばれ、ルクソールの病院の地下にはまだ数人の遺体が横たわっていました。エジプト人は遺体の服を脱がせ、遺留品を荷物の山に投げ込んだため、身元確認が困難になっていました。

負傷者と遺体がスイスに搬送される

負傷者と遺体がスイスに搬送される

事件の翌日、フラビオ・コッティ外務大臣はカイロを訪れ、入院中の生存者たちを訪問。その翌日、負傷者はエールフランスのエアバスでスイスに運ばれました。

死者も特別便で親族、当局の代表者、モーリッツ・ロイエンベルガー連邦参事らが待つスイスに運ばれ、36個の棺が格納庫に並べられ、ロイエンベルガー氏が哀悼の意を表す言葉を述べました。

11月29日グロスミュンスター大聖堂で追悼式が行われる

11月29日グロスミュンスター大聖堂で追悼式が行われる

スイス国内では、連邦宮殿で国民からの哀悼の書に数百人が署名。11月29日、チューリヒのグロスミュンスターで追悼式が行われ、エジプトのアムル・ムサ外務大臣を含む数百人が出席しました。

タブロイド紙の加工された画像が問題に

タブロイド紙の加工された画像が問題に

メディアで取り上げられたこの画像は、わざと赤く染めて血に見えるように加工した写真です。人間の血だまりと勘違いしてしまい、話題となりましたが、タブロイド紙がやり過ぎたことを後に謝罪したそうです。

エジプト政府の掃討作戦でテロ事件は沈静化

エジプト政府の掃討作戦でテロ事件は沈静化

この事件から、エジプトの外国からの観光客減少に拍車がかかってしまいました。相次ぐテロに対する責任をとらせるため、エジプトのムバラク大統領は治安担当の内務大臣を事実上更迭。

また当局は更なる掃討作戦を実行したため、エジプトでの大規模なテロ事件の発生は、「アラブの春」まで沈静化しました。

【まとめ】

2024年現在、ルクソール市内は情勢が安定しているようですが、リビア国境地帯や南北シナイ県は、エジプト政府によるテロリスト掃討作戦が展開される一方、軍・治安当局等へのテロ攻撃が続いています。

この事件の後エジプト政府は、日本人とアメリカ人のツアーには、常に機関銃を持った護衛をつけてくれるようになったということ。それでも命は一つしかありません。危険な地域に旅行する場合は、くれぐれも注意していただきたいものですね。

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