氷の状況をもう一度確認するために発車時刻を1時間遅らせますが、氷が解けているという状況から午前11時38分、ついに打ち上げの許可が出されました。

発射から0.678秒後に後部接続支柱部から黒煙が

発射から0.678秒後に後部接続支柱部から黒煙が

いよいよチャレンジャー号のメインエンジンが点火されました。この時はまだ、メインエンジンを安全に停止することが出来た段階でした。その後メインエンジンの出力は104%まで上がり、2基のSRBが点火。

発射台に繋ぎ止めていたボルトが爆薬により切断され、機体は発射台を離れました。機体が垂直に動き始めた時(発射から0.678秒後)、外部燃料タンクとSRB間を連結する後部接続支柱部から黒煙が上がっている様子が後の調査で確認されました。

第一Oリングと第二Oリングに異変が

第一Oリングと第二Oリングに異変が

この現象は、点火の圧力によってSRBの外殻が膨張して外殻の金属部分が両側から曲がって分離し、開いた隙間から高温のガスが漏れたものということ。

この現象自体に問題はなかったのですが、押し出されたOリングが塞がるまでに受ける損傷である「ブロー・バイ」という現象が起きていました。打ち上げ当日の低気温によってOリングが硬くなり、第一Oリングは密閉が間に合わず、第二Oリングも金属が曲がったことで正しい位置に収まらなかったようです。そのため、燃焼ガスを食い止める手段が失われてしまいました。

ウィンドシアの影響で最後の砦が失われ引火

ウィンドシアの影響で最後の砦が失われ引火

推力が104%まで上がった機体に過負荷を与えないよう、発射から28秒後に65%まで下げます。その5秒後に機体の高度は約5,800mとなり、速度がマッハ1を超えます。

更に51.86秒後に動圧が最大となるマックスQを超え、メインエンジンの推力が再び104%となりました。この時、追跡カメラが右側SRBの尾部接続部から煙が漏れ出し始めたのを捉えていました。

発射直後の右側SRBの接続部の隙間が大きくなり、高音のガスが漏れ始めました。発射から37秒後、チャレンジャー号は大きなウインドシア(ジェット気流による横方向の強風)を何度か受けていたのでした。そのため、損傷したOリングの代わりに一時的に穴を塞いでいた酸化アルミニウムが、ウィンドシアで痛めつけられ最後の砦となっていた守りが奪われてしまったのでした。

もしもウィンドシアがなければ、シャトルは燃焼終了まで持ちこたえた可能性があります。

機体崩壊の始まり

機体崩壊の始まり

1秒ごとに煙が激しくなっていき、右側SRBの壊れた接続部の損傷が大きくなって圧力が次第に低下、60.238秒後には外部タンクに悪影響を及ぼす様子が目視されるまでに。

しかし、この時点でも飛行士達や地上管制官達には正常に見えたのでした。その後、宇宙船通信担当官のリチャード・コービーが「推力上昇を許可」と搭乗員に指示し、船長のディック・スコビーが「チャレンジャー、推力上昇を許可」と答えたのが、最後の通信となっています。

その後、発射から72.284秒後に右側SRBが外部燃料タンクの尾部接続部から引きちぎられました。

乗員室は無傷のまま落下

乗員室は無傷のまま落下

最初に機体が引きちぎられた0.5秒後に、マイケル・J・スミス飛行士が「おや(Uh, oh.)」と言ったのが、乗員室の会話録音機が捉えた最後の会話となっています。

発射から73.124秒後、液体水素タンクの尾部ドームが破損、外部燃料タンクの前部にある液体酸素タンクの方向に押し上げる力が働き、右側SRBが回転を始め、外部燃料タンクと衝突します。

そして73.162秒後に高度14,600メートルの上空で機体の分解が始まりました。チャレンジャー号は様々な要因により、正しい姿勢をとれず20Gもの空力負荷を受けたことにより、軌道船は瞬時に引き裂かれました。

乗員室は強化アルミニウムを使用しており、その設計からも一番頑丈な区画でした。機体が分解する中、乗員室はその形を保ったまま分離し、そのまま自由落下していったということ。追跡カメラによって撮られた写真には、ガス雲の中を飛ぶ無傷の乗員室が捉えられています。

管制室には機体崩壊のバースト音が

管制室には機体崩壊のバースト音が

管制室ではチャレンジャー号空中分解によるバースト音が流れ、モニターにはそれまで映っていたチャレンジャー号に代わり、水蒸気と煙の雲が立ち込めていました。

そして、多数の機体の破片が空中から地上へと落下する光景が写されていたのです。機体崩壊から1分後、地上管制官は音声通話とテレメトリーの「通信途絶、ダウンリンク喪失」を報告しました。

チャレンジャー号爆発事故の責任は誰にある?

チャレンジャー号爆発事故の調査委員会を組織する

チャレンジャー号爆発事故の調査委員会を組織する

チャレンジャー号爆発事故の惨事を調査すべく、当時の大統領であるロナルド・レーガンの命により「スペース・シャトル・チャレンジャー号事故調査大統領委員会」、通称ロジャース委員会が組織されました。

委員長ウィリアム・P・ロジャース、副委員長ニール・アームストロングを筆頭にリチャード・ファインマンやチャック・イェーガーなどの名だたる有識者がメンバーに加わり、数か月間に渡って調査されました。

直接の事故原因はOリングの不具合

直接の事故原因はOリングの不具合

その結果、チャレンジャー号の直接の事故原因は、右側固体燃料補助ロケット接合部を密閉するOリングの不具合によるものと断定。接合部から漏洩した高温ガスと炎が、Oリングとそこに隣接する外部燃料タンクに対し「ブロー・バイ」を引き起こして、機体の崩壊を起こすに至ったとしています。

根本的な責任はNASAとサイオコール社

根本的な責任はNASAとサイオコール社

また、チャレンジャー号爆発事故に繋がった根本的な責任は、NASAとサイオコール社がOリングの設計不良に対して何らの措置もとっていなかったことでした。

報告書によりますと、マーシャル宇宙飛行センターの幹部たちは1977年の時点でOリングの欠陥について認識していましたが、問題をサイオコール社との間だけに止めて、外部に報告しませんでした。

技術者たちの指摘を無視し打ち上げ強行は重大な責任

技術者たちの指摘を無視し打ち上げ強行は重大な責任

この事実はNASAの規定に違反するものでした。更には、その欠陥が深刻なものと明らかになっても欠陥の修正は行わず、過去6度に渡りOリングに関する打ち上げトラブルを起こし、その事実を揉み消すという卑劣な手段に出ていたのでした。

そして、チャレンジャー号の打ち上げに懸念を抱いていた技術者たちの指摘を無視し、打ち上げを強行したことにも言及。

…意思疎通の失敗…が 51-L の打ち上げを決行するという判断に繋がったが、それは以下の要素から生じた。不完全かつ時に誤解を招く情報、技術的データと運用判断の間の衝突、そして飛行の安全性に関わる内部的な問題がシャトル運用の責任者たちを素通りしてしまうことを許すNASAの管理構造

チャレンジャー号の乗組員を紹介

ディック・スコビー機長

ディック・スコビー機長

生年月日:1939年5月19日
出身地:ワシントン州クレ・エルム
職業:空軍中佐、パイロット
ミッション:STS-41-C、STS-51-L

1957年にアメリカ空軍に入隊、テキサス州のラックランド空軍基地でレシプロエンジンの整備士として勤務しながらサンアントニオ大学に通い、1965年にアリゾナ大学で航空工学の学士号を取得して士官となりました。

兵役後、エドワーズ空軍基地のパイロット養成学校に入学し、空軍のテストパイロットとなってボーイング747やF-111、X-24などに約1000時間の飛行を経験。

1978年1月にアメリカ航空宇宙局から宇宙飛行士として選抜され、1984年4月にチャレンジャーSTS-41-Cのパイロットとして最初の宇宙飛行を経験します。

マイケル・スミス飛行士

マイケル・スミス飛行士

生年月日:1945年4月30日
出身地:ノースカロライナ州ボーフォート
職業:海軍大佐、テストパイロット
ミッション:STS-51-L

1967年に海軍兵学校を卒業し、ベトナム戦争に戦闘機のパイロットとして従軍し、多くの勲章を授与されます。1980年5月に宇宙飛行士に選抜され、今回のチャレンジャー号のミッションパイロットとなります。

関連するキーワード

関連するまとめ

H・H・ホームズの殺人ホテルの現在!生い立ちや家族・結婚・子孫と事件の詳細まとめ

H・H・ホームズは、1891年から1894年にかけて発生した連続殺人事件、および詐欺の犯人として知られていま…

Mrsjunko / 30 view

ピザ配達人爆死事件と犯人の現在!爆死したブライアン・ウェルズの遺体/映画やアンビリバ…

2003年のペンシルベニア州で、ピザ配達人ブライアン・ウェルズが銀行強盗を起こした直後に、首につけた爆弾が爆…

passpi / 471 view

ソニー・ビーン一族事件は嘘?実在?洞窟や死刑を逃れた末裔と真相まとめ

ソニー・ビーンとは、15世紀頃にスコットランドに実在したとされる人物です。48人の一族がいて洞窟に住み、人間…

Mrsjunko / 56 view

1046号室殺人事件の犯人と真相!被害者のローランド・T・オーウェンや真実まとめ【未…

1935年1月5日に、アメリカ合衆国カンザスシティにあるホテル・プレジデントの一室で起こった1046号室殺人…

Mrsjunko / 40 view

ブラック・ダリア事件の真相~犯人や関連映画まとめ

1947年にアメリカで起きた殺人事件「ブラック・ダリア事件」は、当時22歳のエリザベス・ショートという女性が…

Mrsjunko / 39 view

ジョンベネ殺害事件の真犯人は?父・母・兄の犯人説/性的被害と霊視などの真相まとめ

1996年12月26日、当時6歳のジョンベネちゃんが自宅の地下室から遺体となって発見された事件は、当時センセ…

Mrsjunko / 38 view

ペトロパブロフスク羆事件は嘘?本当?詳細やクマの大きさなど総まとめ

世界3大獣害事件とされる「ペトロパブロフスク羆(ひぐま)事件」について、その詳細が気になる方が多いようです。…

cyann3 / 74 view

同じカテゴリーの記事

同じカテゴリーだから興味のある記事が見つかる!

ロックフェラー家とロスチャイルド家を比較!関係性と日本との関わりまとめ

ロックフェラー家とロスチャイルド家についての比較に関して注目が集まっています。また、ロックフェラー家とロスチ…

cyann3 / 131 view

ロシアのクリミア侵攻はなぜ?理由と期間・死者・制裁と影響・海外の反応もわかりやすく解…

過去にウクライナのクリミア半島で起きたロシアの軍事侵攻。この出来事は世界中に大きな影響を与えましたが、クリミ…

aquanaut369 / 38 view

黒人アルビノ狩りや人身売買の実態や対策を総まとめ

先天的にメラニンが欠乏する遺伝子の疾患アルビノ。日本にもアルビノの人はいますが、アフリカに生まれた黒人のアル…

aquanaut369 / 27 view

ベイルート港爆発事故と現在!威力と画像や動画・原因・韓国との関係とその後もまとめ

レバノンで起こったベイルート港爆発事故とその後・現在について気になる方が多いようです。また、ベイルート港爆発…

cyann3 / 46 view

14歳のディーラー少年の動画!身元と正体・YouTube視聴方法・再現まとめ【検索し…

検索してはいけない言葉「14歳のディーラー少年」について、その動画について話題になっています。また、14歳の…

cyann3 / 122 view

ノルウェー連続テロ事件の死者と犯人の動機は?生存者が語るウトヤ島銃乱射と映画・犯人の…

2011年7月22日に発生した、単独犯によるノルウェー庁舎爆破事件とウトヤ島銃乱射事件という2つの事件からな…

passpi / 47 view

サラスターン事件の詳細!犯人やその後・現在まで解説

ある日、突然19歳の女性が失踪したことから始まった「サラスターン事件」。アメリカでは「遺体なき殺人」とも呼ば…

aquanaut369 / 24 view

アクセスランキング

人気のあるまとめランキング

スポンサードリンク