即身仏について

1000日から5000日もの苦行に耐えて即身仏に

1000日から5000日もの苦行に耐えて即身仏に

飢餓や病に苦しむ人々を救済するため、自ら土中に入って「仏」となることを即身仏と言われています。

即身仏になるためには、山にこもり、1000日から5000日かけて五穀(米・麦・粟・稗・豆)を絶ち、山草や木の実だけの木食行を行い、体内の脂肪分を落とします。

その後、死期が近づくと、土の中の石室または穴にこもり、鐘や鈴を鳴らして仏の名を唱えながら息絶えます。

掘り返すのは、死後3年3か月が経ってからとされ、若干の手当てが施されてから乾燥させて、即身仏として安置されます。

現存している即身仏は全国に18体で山形に8体

現存している即身仏は全国に18体で山形に8体

日本国内に現存する即身仏は現在18体ほどで、その中の8体は山形県の7か所のお寺に安置されています。

①本明海上人
②忠海上人
③円明海上人
④真如海上人
⑤鉄門海上人
⑥鉄龍海上人
⑦光明海上人
⑧明海上人

僧は民の救済のため永遠の瞑想に入る

僧は民の救済のため永遠の瞑想に入る

日本での一部の地域では民間信仰において、僧は死ぬことなく生死の境界線を越え、弥勒菩薩出世(みろくぼさつしゅっせい)のときまで、民の救済を目的として永遠の瞑想に入ると考えられています。

また、即身仏の由来は、僧が入定した後、その肉体は現身のまま即ち仏になるため「即身仏」と呼ばれたということ。「入定(単に瞑想に入ること)」と区別するため、生入定(いきにゅうじょう)という俗称もあります。

江戸時代には流行り病や飢饉に苦しむ民を救うため、多くの位の高い僧が土中に入って入定しましたが明治時代に入ると法律で禁止されました。

また、入定してから完全な即身仏としてミイラ化するまでには、長い年月がかかり、掘り出されることなく埋まったままの僧たちも多数存在していると推測されています。

即身仏の作り方や失敗例

即身仏の作り方を解説

準備段階として7年間の山修行に入る

準備段階として7年間の山修行に入る

まず最初に、即身仏を志す僧侶は7年間の山修行に入り、1日30キロの山歩きをしなければなりません。

この修行に耐え抜いた僧侶だけが即身仏になる資格を得られるということですね。

即身仏の作り方

即身仏の作り方

即身仏の作り方というのもおかしいのですが、即身仏になろうとする者は、死後、肉体が腐敗しないように整える必要があります。

科学の発達していない時代に、どのようにして即身仏を作り上げたのかを説明していきますね。

木食行(ぎょう)で体の脂肪分を落とす

木食行(ぎょう)で体の脂肪分を落とす

最初は木食行を行う必要があります。米・麦・粟・稗・豆などの穀物を絶ち、木の皮や木の実だけを食べて、経典を読んだり瞑想をしたりして過ごします。

防腐剤の代わりに漆のお茶を飲むことも

防腐剤の代わりに漆のお茶を飲むことも

腐敗の原因となる脂肪を落とし、水分もごく少量だけを口にすることで、筋肉も落ちていきます。防腐剤の代わりとなる漆のお茶を飲むこともあり、嘔吐して増々体の水分が抜けていきます。

しかし、漆は胃からの吸収だけで全身の腐敗を防止する成分を行き渡らせることは不可能であり、実際には気休め程度の効果しかないということがわかっています。更に、防腐効果が出るほどの量を飲めば中毒死してしまうでしょう。

どの程度の量を飲んだのかはわかりませんが、死ぬほどの苦しみだったことは確かですね。

死期が近づくと土中に入り息絶えるまで経典を唱える

死期が近づくと土中に入り息絶えるまで経典を唱える

このような苦行に耐え、死期が近づくと土中に箱を埋めその中に入ります。節をぬいた竹で箱と地上を繋いで空気穴を作り、外との最低限の通信ができるように、糸などに鈴をつけて、鈴を鳴らしながら経典を唱えます。

当然ながら鈴が鳴らなくなった時が息絶えたときであり、入定の準備が整ったという証です。こうした大変な苦行の中、即身仏となり永遠の命が宿ることになります。

即身仏に失敗したらどうなる?

しかし中には途中で断念する者も存在しました。即身仏の修行は非常に過酷で、断念する以前に途中で命を落として失敗してしまうことも多かったようです。

耐えきれず途中で逃げ出した場合

耐えきれず途中で逃げ出した場合

時には耐えられなくなって、即身仏の修行中逃げだす人も多くいました。途中で逃げた僧侶は寺院から追放され、関係した他の僧侶も追い出されてしまう罰を受けたようです。

追放や死刑になる

追放や死刑になる

中には死刑になることもあったという話も。即身仏になるために必要な、何千日にも及ぶ地獄のような修行のため、逃亡者がでるのは無理もないことでしょう。

しかし、生き延びたとしても死刑になるリスクもありますので、ちょっとの覚悟では即身仏を目指すことはできないのではないでしょうか。

僧侶仲間に殺されることも

僧侶仲間に殺されることも

断念した者の中には、死刑にならない代わりに脱落者に対する決まり事によって、僧侶仲間に殺害される者もいたということ。

7年間の山修行の際などは、短剣を持ち歩いていたそうです。それは、修行中に逃げ出したくなったときに自害できるようにするためだったそうです。

即身仏として成功した本明海上人は、なんと4000日(約11年間)もの苦行の修行に耐え抜いたのです。

気候条件での失敗の場合

気候条件での失敗の場合

日本のような湿気の多い温暖な気候の環境下では、いくら努力しても腐敗を防ぐのは困難を伴います。そのため、苦行の末に息を引き取っても、死後腐敗が進み、即身仏になれなかった例も多くあります。

せっかく苦しい思いをしてまでも、即身仏になることを望んでいた僧侶にとって、これほど侮辱的なことはありませんね。

掘り出し時期や処理の仕方でも失敗する

掘り出し時期や処理の仕方でも失敗する

また、即身仏を作るには、適切な時期に遺体を掘り出す必要があります。そのため、関係者の後の努力にも大きく左右されるのです。

死後の処理が遅れたり、処理されても不完全だったりして、即身仏として安置されなかった事例もあります。

即身仏があるのは日本だけ?

即身仏とミイラの違い

即身仏とミイラの違い

スリラー映画などの作品によく登場するミイラは、エジプトのファラオやツタンカーメン、カタコンベに安置された亡骸などです。ミイラは歴史を通して世界のいたるところで作られてきました。しかし、それらがミイラとして製作されるのは死後。

これに対して即身仏とは、即身仏になろうと志す修行僧が命を懸けて過酷な修行をし、瞑想を続けながら原型を保ったまま絶命した状態のことを指します。

出来上がる経緯が全く異なるため、根本的に即身仏とミイラは違うということになります。

現在は日本に18体の即身仏が存在します。そんな即身仏は、日本だけに存在するのでしょうか。

調べてみたら、海外にも即身仏と呼ばれる方が存在していることがわかりました。

ロシアのダシ=ドルジョ・イチゲロフの即身仏

ロシアのラマ僧ダシ=ドルジョは不死を実現?

ロシアのラマ僧ダシ=ドルジョは不死を実現?

ダシ=ドルジョ・イチゲロフ(1852年~1927年)は16歳で仏門に入り、アニンスキー・ダツァンで仏教哲理、チベット医学を学び、チベット薬学の薬理学辞典を作った方です。

1898年には故郷に戻り、ラマ僧として仏教哲学を教えていました。彼が年老いた時、過酷なやり方で入滅(煩悩の炎が吹き消えた状態、宗教的解放を意味する)の準備をすることにしました。

弟子たちに、ヒマラヤ杉の棺に自分を入れ、30年後に遺体を掘り起こすよう命じたのです。その意図は不死が作り話ではないことを実証することでした。

1927年6月15日、75歳となったダシ=ドルジョは、弟子たちに「30年たったら私の体を掘り出してくれ」と言い残して別れを告げ、数日後に息を引きとると、弟子たちは命じられた通りに遺体をヒマラヤ杉の箱に納めました。

30年後にダシ=ドルジョの棺を掘り起こすと…

30年後にダシ=ドルジョの棺を掘り起こすと…

師の言いつけ通り、弟子たちは30年待ちました。そして30年経った1955年に遺体が掘り起こされ、中を見た人たちは息を飲む……

ダシ=ドルジョの遺体は、30年前に蓮華座を組んだそのままの姿だったのです。防腐処理などは一切施していないのに、腐敗の跡はほとんど見られませんでした。

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