チャレンジャー号爆発事故の概要

打ち上げから73秒後に空中分解

打ち上げから73秒後に空中分解

チャレンジャー号爆発事故とは、1986年1月28日アメリカのスペース・シャトル・チャレンジャー号が、打ち上げから73秒後に機体が空中分解し、乗組員7名が亡くなった事故です。

場所はフロリダ州中部沖の大西洋上で、チャレンジャーにとっては10回目のミッションであったということです。

空中分解の原因はOリング

空中分解の原因はOリング

機体の分解の原因は、右側固体燃料補助ロケット(ソリッド・ロケット・ブースター)の密閉用Oリングが、打ち上げ直後に破損したことから始まりました。

Oリングが破損したことによってSRBの接続部から漏れが生じ、固体ロケットエンジンから発生する高温・高圧の燃焼ガスが吹き出して、隣接するSRB接続部材と外部燃料タンクに重大な影響を与えました。

その結果、右側SRB尾部の接続部分が分離し、更に外部燃料タンクの構造破壊が起き軌道船が一瞬の内に破壊されたということ。

捜索・回収に長期間を要した

捜索・回収に長期間を要した

海上で分解し、乗組員や機体の殆どは海の中に落下したため、捜索・回収作業は長期間に渡って海底から回収されています。機体分解後も何人かは生きていた可能性がありますが、チャレンジャー号には脱出装置が装備されておらず、海上への激突の衝撃で生き残った乗組員はいませんでした。

事故調査にロジャース委員会を任命

事故調査にロジャース委員会を任命

事故後に当時の大統領であるロナルド・レーガンは、調査委員会の「ロジャース委員会」を立ち上げて調査した結果、事故の大元の原因はNASAの組織文化にあると結論付けました。

NASAの幹部は1977年の段階で既に、サイオコール社が設計したSRBのOリングに致命的な欠陥があることに気付いていたようです。しかし、問題を明かすことなく、Oリングについて指摘していた技術者の警告も無視して打ち上げを続行。

その後ロジャー委員会は、NASAに対してシャトルが飛行を再開するまでに実行すべき9項目の改善案を提示しています。

チャレンジャー号爆発事故の原因はOリング!

打ち上げ日は予定より6日遅れた

打ち上げ日は予定より6日遅れた

チャレンジャー号の発射予定日は、当初1986年1月22日午後2時42分でした。しかし、コロンビア号の着陸の遅延や天候の悪化などの条件により、6日遅れの1月28日、フロリダ州ケネディ宇宙センターとなりました。

打ち上げ当日の朝はかなりの低気温で、発射台周辺の気温は打ち上げ実施可能な下限値である氷点下1℃まで下がると予想されました。

サイオコール社とNASA幹部で遠隔会議を開くが…

サイオコール社とNASA幹部で遠隔会議を開くが…

サイオコール社の技術者たちは、この異常寒波に一様に懸念を抱いていたと言います。打ち上げ前日の27日夜にサイオコール社の技術者と幹部は、ケネディ宇宙センターとマーシャル宇宙飛行センターのNASA幹部と遠隔会議を開き、気象条件に関することで会議を行いました。

実際発射一時間前の整備塔には、これだけの氷がこびりついた状態でした。

以前にもOリングの件で懸念を表明した技術者のロジャー・ボージョレー氏は、今回もSRBの接合部を密封するゴム製Oリングが、異常な低温によって弾力性が失われる影響を表明。

Oリングは12℃以下になると柔軟性が失われる可能性が

Oリングは12℃以下になると柔軟性が失われる可能性が

写真はSRB連結部分の断面図です。Bで指示されている丸がメインのOリング、Cで指示されている丸がバックアップのOリング。

各SRBには6か所の接合部があり、3か所は製造工場で結合されますが、残りの3か所はケネディ宇宙センターのスペースシャトル組立棟で結合されます。

全ての結合部の役割は、固体燃料の燃焼で発生した高温・高圧の燃焼ガスが、ノズルから正常に噴射されるように密閉して、ガスの漏洩を防ぐことです。

しかし、12℃以下になった場合正常に機密性を保つだけの柔軟性があるかのデータがないことを技術者たちは主張しました。重大な懸念材料となったのは、Oリングが「致命度1」に指定されていたこと。

Oリングは「致命度1」の重要部品

Oリングは「致命度1」の重要部品

万が一主リング及び副リングが破損した場合、バックアップがなくOリングの破損は機体の破壊や乗組員の命を危険に晒すことになると訴えました。

それに対するNASAの意見は、「主リングが故障しても副リングが十分に密閉性を保ってくれる」というものでした。しかしこれは、実証されていないもので、「致命度1」の重要な部品に対しても規定に違反する論法でした。

技術者の指摘を無視

技術者の指摘を無視

また技術者たちは、今回の打ち上げでは夜間低温になるため、SRBの温度危険値である4℃を間違いなく下回るだろうと指摘していました。

しかし、NASAの幹部やサイオコール社の幹部はその指摘を無視し、予定通りの打ち上げを敢行するよう勧告し、最悪の事態が訪れます。

チャレンジャー号打ち上げから機体分解まで

打ち上げ当日はかなりの低温だった

打ち上げ当日はかなりの低温だった

チャレンジャー号打ち上げ当日の1986年1月28日は、危惧していた通りかなりの低温になっており、発射台の整備塔にはおびただしい量の氷が貼り付いていました。それは、50センチほどの氷柱となっていたということ。

氷対策班は徹夜で氷を除去したものの、シャトルの主契約企業ロックウェル・インターナショナルの技術者たちは、打ち上げに対する懸念を表明していたということでした。

カリフォルニア州にあるロックウェル本社では、発射台を監視していた技術者たちが氷の量を見て戦慄を覚えたと語っていました。打ち上げの際にSRBの排気ガスの噴流の吸引力によって、氷が振り落とされシャトルの耐熱タイルを直撃するのではないかとの懸念を表明。

午前11時38分ついに打ち上げ許可が下りる

午前11時38分ついに打ち上げ許可が下りる

この懸念を打ち上げの障害であるとみなし、基地にいたロックウェル社幹部に打ち上げを支持できないと警告するも、ケープ基地のロックウェル社幹部はこれをしっかりと伝えなかったと言います。

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