カニバリズムはなぜ行われてきたのか

カニバリズムは日本語で「共食い」

カニバリズムは日本語で「共食い」

カニバリズムとは、日本語で共食いという意味に訳され、一般には動物が同種の個体を食べる行為という意味になります。

現代では人間が人間の肉を食べることはタブーとされており、普通であれば嫌悪感を抱く人が圧倒的に多いでしょう。

カニバリズムは実際にあった

カニバリズムは実際にあった

過去に遡ってみると、カニバリズムは実際にありました。しかしそれは宗教儀式であったり、侵略行為として行われていたりすることがほとんどです。

最近まで南太平洋の孤島で、カニバリズムの習慣が続いていた民族がいることは、知っている方も多いのではないでしょうか。

ネアンデルタール人はカニバリズムだった

ネアンデルタール人はカニバリズムだった

ネアンデルタール人はカニバリズムを行っていたと考えられており、解剖学的にホモ・サピエンスが食べていた可能性があります。人肉食は古代ローマ時代やその後の深刻な飢餓の際にもエジプトで時折行われていました。

カニバリズムは世界の多くの地域で記録されている

カニバリズムは世界の多くの地域で記録されている

カリブ諸島はカニバリズムという言葉の語源となっており、人肉を食べる人として知られていて、17世紀に彼らの伝説が記録されたことで再確認されました。

カニバリズムは、フィジー、アマゾン盆地、コンゴ、ニュージーランドのマオリ族など、世界の多くの地域で詳しく記録されています。人肉食はニューギニアやソロモン諸島の一部でも行われ、メラネシアやコンゴ盆地の一部の市場では人肉が売られていたということです。

近世ヨーロッパでは17世紀から19世紀にかけてカニバリズムが流行

近世ヨーロッパでは17世紀から19世紀にかけてカニバリズムが流行

近世ヨーロッパで流行したカニバリズムの形態は、医療目的で体の一部や血液を使用することでした。17世紀に最盛期に達し、19世紀後半まで継続したのです。

ドナー隊やウルグアイ空軍機571便遭難事故では飢餓の手段として

ドナー隊やウルグアイ空軍機571便遭難事故では飢餓の手段として

またカニバリズムは、飢餓に苦しむ人々の最後の手段として時折行われてきました。よく知られた例としては、不運なドナー隊(1846~1847年)や、その後生存者が死者の遺体を食べたウルグアイ空軍機571便遭難事故(1972年)などが挙げられます。

一方で快楽のためのカニバリズムも

一方で快楽のためのカニバリズムも

さらに、アルバート・フィッシュ、佐川一政、ジェフリー・ダーマー、アルミン・マイヴェスなど、性的快楽のためにカニバリズムを行った例もあります。

戦争や憎悪からも行われる

戦争や憎悪からも行われる

カニバリズムは、近年ではリベリア共和国やコンゴ民主共和国などの戦争などでも行われており、激しく非難されています。さらに文化的な理由から、2012年の時点でパプアニューギニアでは最近まで行われていました。

カニバリズムは日本・中国・その他の地域でも行われていた

初期の記録でのカニバリズムは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間で何十万年にわたって行われてきたという証拠があります。他の人類によって「肉を剥がされた」人骨は60万年前に遡り、一部の人類学者は、後期旧石器時代が始まる前にはカニバリズムが人間社会で一般的であったと示唆しているようです。

そんなカニバリズム文化は、日本や中国を始めとする各国々の地域でどのような形で行われてきたのでしょう。以下に地域ごとのカニバリズム事情を紹介していきます。

日本でのカニバリズム

大森貝塚でカニバリズムと思われる人骨を発見

大森貝塚でカニバリズムと思われる人骨を発見

縄文時代後期の大森貝塚で、埋葬用の墓地とは別に家畜の骨や貝殻を捨てていた場所があり、そこで家畜の骨と一緒に細かく砕かれた人骨が発見されていることから、カニバリズムの痕跡が伺えます。

綏靖天皇や安達ヶ原の鬼婆の説

綏靖天皇や安達ヶ原の鬼婆の説

また綏靖(すいぜい)天皇(日本の第2代天皇)が、七人の人を食べたという史料や安達ヶ原の鬼婆の説、肝取り地蔵などの説話など、古代日本でのカニバリズムの存在があちこちに見られます。

『遠野物語拾遺』にも記録されている

『遠野物語拾遺』にも記録されている

『遠野物語拾遺』第296話と第299話に、遠野で5月5日に薄餅(すすきもち)を、7月7日に筋太の素麺を食べる習慣の由来として、死んだ妻の肉と筋を食べた男の話が記録されています。

信長公記や戊辰戦争での記述も

信長公記や戊辰戦争での記述も

『信長公記』には、鳥取城が羽柴秀吉によって兵糧攻めされたおり、籠城していた兵たちに食べ物が無くなり、草や木、牛や馬を食べ尽くしてしまい、城を脱走しようとして織田軍に殺された人間を食い争ったとあります。

戊辰戦争の際には、旧幕府側総指揮官の松平正質が敵兵の頬肉を焼いて食し、薩摩藩兵が死体から肝臓を取り、煮て食べたという記述もあります。

薬食としてのカニバリズム

薬食としてのカニバリズム

この画像は熊胆(ユウタン)と言われるもので、クマの胆嚢を乾燥させたものですが、江戸時代に処刑された罪人の死体を、日本刀で試し斬りすることを生業としていた山田浅右衛門という人物が、死体から肝臓を取り出して乾燥させ、「人胆丸」という薬にして販売していたそうです。

明治初頭には、人肝・霊天蓋(脳髄)・陰茎などが密売されていて、明治の終わりごろにはハンセン病に効くと、人の臀部の肉をスープにしていたようです。

また、日本への原爆投下の際、被災地では「人骨を粉末状にしたものが放射線障害に効く」と、マンガ『はだしのゲン』に描写されていました。

弔いや尊敬の念によるカニバリズム

弔いや尊敬の念によるカニバリズム

沖縄ではかつて、葬儀の際に亡くなった人の肉を振る舞うという風習がありました。

また、日本本土でも葬儀で亡くなった人の骨を食べる「骨噛み」という儀式もあったそうです。

戦争による飢餓や虐待からのカニバリズム

戦争による飢餓や虐待からのカニバリズム

太平洋戦争では食料が底をつき、死者の肉を食べて生き延びた例もあります。また、民間人の親子を殺して食べ、その兵士はアメリカ軍により銃殺刑となっています。

小笠原事件(父島事件)では、アメリカ軍の捕虜の肉を酒宴で供し、BC級戦犯として処刑されました。

1944年には、陸軍徴用船の中で乗組員が飢餓寸前になり、遺体を食べて凌いだ「ひかりごけ事件」がありました。

中国でのカニバリズム

殷代以前から盛んに行われていた

殷代以前から盛んに行われていた

中国ではカニバリズムが盛んに行われていたようです。殷代以前(紀元前17世紀~紀元前1046年)には人身御供とともにカニバリズムが行われていたと考えられます。

中国戦国時代の法家、韓非の著書である『韓非子』に「紂為肉圃、設炮烙、登糟丘、臨酒池、翼侯炙(あぶり肉)、鬼侯臘(干し肉)、梅伯醢(かい、塩漬け肉」という殷代の人の肉に関する伝承の記述が見られます。

暴君紂王の残虐行為とされ忌避された

暴君紂王の残虐行為とされ忌避された

なお後世の儒教では、カニバリズムは暴君たる紂王(ちゅうおう:殷王朝最後の王)個人に関わるものと解釈されました。カニバリズムは、暴君の残虐行為のひとつとして批判され、忌避されたということ。

そのような常習的なカニバリズムは無くなったものの、飢饉や戦争などに関係するような人肉食はその後も絶えませんでした。

飢えた民が子供を交換して食べた

飢えた民が子供を交換して食べた

孔子の編纂と伝えられている歴史書の『左伝』において、飢えた民が子供を交換して食べたという記録があり、これが飢饉による人肉食の最も古い記録となります。

病気の夫に妻が自分の肉を食べさせた

病気の夫に妻が自分の肉を食べさせた

五代十国(907年~960年)以降にカニバリズムの記録が多く出現します。元代(モンゴル帝国の征服王朝)の著書『事林広記』には、妻が自分の肉を病気の夫に食べさせたことが美談として称賛され、朝廷が絹や羊、田などを褒賞として与えたという記述があります。

戦場でのカニバリズムの実例と調理法が紹介

戦場でのカニバリズムの実例と調理法が紹介

民間では、元末(1300年以降)の陶宗儀の随筆である『南村輟耕録』に、戦場でのカニバリズムの実例と調理法が多く紹介されています。この方法を採用した部隊では、戦果が食に直結するため、大いに士気が上がったということです。

女性の血から作った薬が強壮剤として流行

女性の血から作った薬が強壮剤として流行

明代(1368年~1644年)の医師で本草学者の李時珍による『本草綱目』の人部には、人肉をはじめ人間由来の漢方薬が記されています。特に宮廷を中心としており、女性の血から作った薬(仙丹)が強壮剤としてもてはやされました。

明代で人類史上最も残酷な刑罰「凌遅刑」が始まる

明代で人類史上最も残酷な刑罰「凌遅刑」が始まる

不妊に悩む嘉靖帝(明の第12代皇帝)は、宮女に薬を与えて出血を強要したため、その多くが衰弱死したということ。また、宋代より全身を切り刻む凌遅刑(りょうちけい)が始まり、著名人が凌遅刑後に被食された事例に劉瑾(明代の宦官)が挙げられます。

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